研究計画に掲げた階層型配位高分子を合成するためには、コアおよびシェルの双方に反応活性を持たせることが重要である。1年度目では、様々なシアノ架橋錯体ポリマーのコアシェル型微粒子を合成し、その反応特性について評価した。具体的には、反応不活性なシアノ架橋金属錯体ポリマーをコア、活性な錯体ポリマーをシェルとすることで、コア部位とシェル部位の相互作用、および外部環境に応答するシェルの厚さについて詳細に評価した。シアノ架橋金属錯体ポリマーの酸化触媒能から以上の評価を行ったところ、シアノ架橋金属錯体ポリマー粒子表面から7 nm付近までが、外部環境の影響を受けて反応する部位であることが分かった。 以上の結果を踏まえ、2年度目には、小分子を単座配位子として含むシアノ架橋金属錯体ポリマーを合成し、単座配位子の置換活性(小分子の放出機能)について評価した。ヘキサシアノ金属酸イオン([FeII(CN)6]n-)の代わりに、ペンタシアノアンミン金属酸イオン([FeII (CN)5(NH3)]n-)を原料としてシアノ架橋金属錯体ポリマーを合成した。種々の金属イオンと[FeII (CN)5(NH3)]n-を原料としてシアノ架橋金属錯体ポリマーを合成したところ、金属イオン種によりNH3の放出特性が異なることを見出した。さらに、各種分光測定により、NH3放出特性の違いがCN-配位子を通じた金属イオン間の電子的相互作用に由来することを見出した。 上記研究成果のうち、1年目の成果の一部はApplied Catalysis B: Environmental誌に、2年目の成果の一部はInorganic Chemistry誌にそれぞれ掲載されている。残る部分も本報告書「7. 研究発表」に示した各学会で発表済であり、現在論文執筆中である。
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