研究課題/領域番号 |
19K15596
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
真栄城 正寿 北海道大学, 工学研究院, 助教 (40744248)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 5 / タンパク質結晶構造解析 / X線結晶構造解析 / タンパク質ーリガンド複合体 |
研究実績の概要 |
タンパク質ーリガンド複合体の複合体立体構造解析は、創薬やタンパク質の機能解明において重要である。しかし、従来のタンパク質ーリガンド複合体の構造解析は、結晶の調製、複合体の調製、凍結保護処理、測定、解析といった多数の工程が必要であり、スループットに課題があった。また、測定中の結晶の劣化(放射線損傷)を抑制するために、100 Kの低温下で測定されることから、より生理条件に近い室温での効率的な測定法の開発が望まれている。そこで本研究では、マイクロ流体デバイスを用いた室温でのタンパク質ーリガンド複合体の構造解析法の開発を目的とした。測定のコンセプトは、(1)調製したタンパク質の単結晶をマイクロ流体デバイスに集積化したマイクロウェル内に固定、(2)リガンド溶液の導入・複合体調製、(3)連続的なX線回折実験であり、実験操作はピペッティングのみで行うことができる。本年度は、測定コンセプトに基づいたマイクロ流体デバイスの開発に取り組んだ。また、モデルタンパク質としてリゾチーム 、ソーマチン、トリプシンを用いて、放射光施設でのオンサイト実験とタンパク質ーリガンド複合体の構造解析への応用を試みた。タンパク質の結晶を高効率にウェルに捕捉するために、ウェルサイズの最適化を行った。ウェルサイズを最適化後、ビームライン(SPring-8 BL26)オンサイトでの結晶固定・リガンド複合体調製・X線回折実験を行なった。3種類のモデルタンパク質全てのアポ体、および、リガンド複合体の構造を決定することが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定コンセプトの検証については、マイクロ流体デバイス内にタンパク質の結晶を固定し、複合体調製と連続的な測定に成功しており、当初の計画通りに研究が進行している。マイクロ流体デバイスの構造に関しては、最適化を進めることで結晶の捕捉効率をさらに向上できる可能性がある。流路構造の最適気化については、次年度に取り組む予定である。本測定法で得られる複数の回折データの処理については、ビームラインソフトウェアを有効利用することで半自動化ができることを確認しており、次年度にはデータ取得・処理効率の改善に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、マイクロ流体デバイスの流路構造と結晶固定条件の最適化に取り組む。現在のデバイスの場合は、結晶がマイクロ流路を流れる際に自然沈降することでウェルに捕捉される。そのため、結晶の捕捉方法を受動的な自然沈降から、流体制御による能動的な捕捉方法に改良することで、捕捉効率の向上と測定スループットの改善に取り組む。また、リガンドスクリーニングのスループットを改善させるために、1デバイスで最低10条件のタンパク質-リガンド複合体の測定が可能な新たな結晶固定法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定コンセプトを検証するための試作型マイクロ流体デバイスが、想定よりも短期間で作製できたため、開発費を圧縮することができた。また、放射光施設への学生の旅費についても、高エネルギー加速器研究機構の補助を得ることができ、出費を抑制することができた。次年度は、作製したマイクロ流体デバイスの構造最適化を加速するために、デバイスの試作・評価を繰り返す予定である。シリコンウエハ・フォトレジスト・シリコーンゴムなどを助成金で購入し、デバイス開発を推進する。
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