本年度は、タンパク質の結晶を効率良くマイクロウェルに捕捉するための条件・デバイスの最適化を行った。マイクロウェルの直径と結晶捕捉効率の関係を明らかにし、本測定コンセプトに適したウェル直径を見出した。本測定法では、タンパク質の立体構造を決定するために、ウェルに捕捉した複数の結晶からX線回折データを収集する必要がある。そのため、捕捉した結晶はX線に対してランダムに配向することが望ましい。マイクロウェルに捕捉した結晶にX線を照射して、結晶の配向面のばらつきを評価した結果、結晶はランダムに配向していることが分かった。この結果をもとに、モデルタンパク質として、ソーマチン・リゾチームの構造解析を試みた結果、測定する結晶数の増加とともに、分解能およびCompletnessの向上が確認された。さらに、本測定コンセプトをタンパク質・リガンド複合体の構造解析に応用し、昨年度報告したリゾチーム、ソーマチンの複合体構造だけではなく、トリプシンとリガンド複合体の立体構造も決定することが可能であった。トリプシンの場合には、8種類の複合体構造を決定し、そのうちの6種類は新規複合体構造であった。さらに、結晶捕捉効率を向上するため、マイクロウェルに能動的な結晶捕捉機能を付与したデバイスを開発した。改良したデバイスによって、プロトタイプデバイスよりも少ない結晶数で高効率にタンパク質の結晶をウェルに捕捉することに成功した。改良したデバイスでも、タンパク質・リガンド複合体の構造解析が可能であった。
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