研究実績の概要 |
本研究は申請者がこれまでに開発したα2,3シアル酸開環アミノリシスを基盤としたシアル酸結合様式特異的修飾法(アミノリシス-SALSA法)を応用し、1)安定同位体試薬を用いた糖鎖比較質量解析法、2)ビオチン誘導体化アミン試薬を用いた糖タンパク質の精製・濃縮法、3)マウス組織切片におけるシアル酸結合糖タンパク質の蛍光標識法の開発を目的としている。本年度は、ビオチン誘導体化アミン試薬を用いたO型糖タンパク質の精製・濃縮法の開発に取り組んだ。アミノリシス-SALSA法では様々な直鎖一級アミン類縁体によるα2,3結合シアル酸特異的な修飾が可能な点である。そこで、シアリル T 糖鎖((α2,3NeuAc)(Gal)(GalNAc))が結合している合成糖ペプチドを用いて、ビオチン誘導体化アミン試薬であるビオチン-PEG2-アミンによるα2,3シアル酸の修飾を検討した。結果、α2,3シアル酸のビオチン-PEG2-アミンによる修飾が確認できた。次に、アビジンビーズを用いた糖ペプチドの精製法について検討したところ、糖ペプチドを回収することはできたが、溶出過程でペプチド側に予期せぬ修飾が起こっていることがわかった。そこで、現在は溶出条件の詳細な検討を進めている。また本年度は、エステル化により調製したシアリル化糖鎖と直鎖型一級アミン試薬を混合し反応させることで、エステル化された α2,3シアル酸のみが分子内ラクトン環を形成し、環開裂アミノリシスにより選択的にアミド交換を行うことができるエステル-アミド交換法を開発した。本方法では、分子エネルギー計算からシアル酸の結合様式や隣接する糖の水酸基の位置の違いにより分子内ラクトンの安定性が異なることを見出し、この分子内ラクトンの安定性の違いを利用することでシアル酸結合様式だけではなく、糖鎖の分岐構造も識別できること見出し、学術論文として成果報告を行なった。
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