脳内の数百μmスケールでの多様な神経伝達物質の可視化・関連付けを行うことで、海馬や前頭葉などの領域間における様々な情報伝達、つまり「脳内領域間コミュニケーション」を可視化することができる。これにより、多様な神経伝達物質と脳機能の関連性が明らかになり、脳科学・神経科学の発展に大きく貢献できる。本研究では、領域間コミュニケーションにおける神経伝達物質の可視化を可能とする超高感度・多項目・広範囲・リアルタイムイメージング可能な新規電気化学デバイスを開発する。本デバイスでは、「集積回路型電気化学イメージングデバイス」と、神経伝達物質の超高感度検出が可能な「レドックスサイクル誘導電極アレイ」および「酵素修飾電極」を組み合わせることで、超高感度・多項目解析を実現し、脳内の各領域間コミュニケーション、特に刺激に対する様々な神経伝達物質の関連性の解明を目指す。1年目は電極アレイの作製、2年目は、電極アレイの最適化や、予備試験的にin vivoでの神経伝達物質放出挙動および活動電位の計測を行った。 最終年度となる本年度は、神経伝達物質のリアルタイム計測および脳モデル用の3次元足場材料の作製を試みた。昨年度に引き続き、予備試験的にブタやマウスを用いたin vivoでの神経伝達物質の放出挙動や活動電位の計測を行った。酵素修飾電極などを用いて、脳内でのドーパミンや乳酸の刺激に応じた放出をリアルタイムで計測することで、計測部・刺激部の脳内領域間コミュニケーションを予備試験的に確認することができた。足場材料において、前年度作製した3次元ゲルを用いた人工脳モデルの構築を試みた。神経細胞ネットワークの構築までには至らなかったが、ゲル表面にタンパク質の修飾ができることを確認し、細胞接着や細胞分化誘導を促進に期待ができる結果が得られた。
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