研究課題
前年度までに,反射型MAIRSの骨格となるMAIRS2を開発した.さらに,電磁気学に基づいた計算により,反射型MAIRSが理論的に機能することを証明した.本年度は,実際に反射型アクセサリを装着した市販のFT-IR分光器を用いた測定により,この手法が実験的に機能することを調べた.薄膜試料にはMAIRSの標準試料であるフルオロアクリレートポリマーを用いて,汎用的な基板材料であるシリコンウェハ上にスピンコート薄膜を製膜した.得られた薄膜のMAIRSスペクトルを,計算によって明らかにした最適な測定条件に基づいて得たところ,従来の透過型MAIRSと同等な結果が確認された.ベースラインの歪みや測定感度など,実用化に向けて改善すべき点もあるが,実質的には反射型MAIRSを開発できたといえる.また,研究期間全体を通じて,MAIRSそのものの応用の幅を格段に拡げることに成功した.具体的には,分子配向に加えて,化学成分量や結晶構造,分子間相互作用など多岐にわたる構造情報を同時に得られることを様々な系に対して実証した.例えば,この手法を有機エレクトロニクス材料の前駆体薄膜に応用することで,構造転換反応による分子配向および化学種の量的変化を同時に解析した.また,別の系では,前駆体の分子凝集構造が化学反応の進行を決める鍵となることを,MAIRSの測定データから明瞭に示した.これらの例が示すように,本課題では反射型MAIRSを開発するとともに,この手法が表面反応をはじめとする様々な薄膜の構造解析に強い適性があることを示した.
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 3件)
Journal of the American Chemical Society
巻: 145 ページ: 7528~7539
10.1021/jacs.3c00805
Advanced Materials
巻: 35 ページ: 2208320~2208320
10.1002/adma.202208320
The Journal of Physical Chemistry Letters
巻: 13 ページ: 11918~11924
10.1021/acs.jpclett.2c03399