研究課題/領域番号 |
19K15605
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
岡村 浩之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究員 (30709259)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イオン液体 / 溶媒抽出 / 希土類錯体 / リン酸イオン / 発光センシング / β-ジケトン / ランタノイド / 協同効果 |
研究実績の概要 |
イオン液体を溶媒抽出の媒体として用いた場合は,無電荷種だけでなく,イオン液体を構成する成分とのイオン交換により荷電種も抽出できる。したがって,従来の有機溶媒系では不可能であったリン酸イオンの抽出系を構築でき,イオン液体相への抽出分離により極微量リン酸イオンのセンシングが可能になると期待できる。本研究は,多点認識型希土類錯体を抽出発光センサとして用いて,リン酸イオンの高効率かつ選択的なイオン液体抽出系を構築し,リン酸イオンの高感度発光センシングシステムを開発することを主な目的としている。本年度は,1) β-ジケトン型配位子を有するユウロピウム錯体を合成し,リン酸イオンおよび種々のアニオンのイオン液体1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド([C4mim][Tf2N])への抽出,2) β-ジケトンと疎水性中性配位子を用いたランタノイド(III)イオンの協同効果抽出について研究した。 1) 二座配位子のβ-ジケトンを有する配位不飽和ユウロピウム錯体を合成し,リン酸イオンおよび種々のアニオンを含む水相とユウロピウム錯体を溶解させたイオン液体[C4mim][Tf2N]相とを振とうすることにより抽出実験を行った。抽出前後の水相中のアニオン濃度をイオンクロマトグラフィーにより測定し,各アニオンの抽出特性を評価したところ,リン酸イオンに対して高い抽出率が得られ,合成したユウロピウム錯体はリン酸イオンを定量的にイオン液体相に抽出できることを明らかにした。 2) β-ジケトンとトリオクチルホスフィンオキシドを用いたランタノイドのイオン液体抽出系では,疎水性荷電錯体の形成によりランタノイドの抽出能・分離能が向上し,イオン液体相に抽出されたランタノイドイオンは,酸性水溶液によって逆抽出回収でき,逆抽出後のイオン液体相は抽出溶媒として再利用可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に実施した内容は,概ね研究計画に沿ったものである。合成した配位不飽和ユウロピウム錯体を抽出発光センサとして用いて,リン酸イオンの高効率なイオン液体抽出系の構築に成功するなど,当初期待した通りの成果が得られていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画に大きな変更はなく,当初の計画に沿って,ユウロピウム錯体の分光特性を解明し,リン酸イオンの発光センシングシステムへ展開することを目指して研究を実施する。最終的には,環境水中の極微量リン酸イオンのセンシングを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) イオンクロマトグラフのオプション品の購入を次年度以降にしたほか,ユウロピウム錯体およびイオン液体の合成用試薬,溶媒抽出実験で使用する試薬等消耗品,イオンクロマトグラフ用消耗品が当初の予定よりも安価に入手できたため。 (使用計画) ユウロピウム錯体およびイオン液体の合成用試薬,分光測定実験で使用する試薬等消耗品,イオンクロマトグラフ用消耗品の購入のほか,当初予定していたイオンクロマトグラフのオプション品の購入や分光測定システムの拡張に使用する予定である。
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