研究課題
本研究課題では、原子力関連施設で発生する数マイクロメートル程度のウラン微粒子の化学状態を判別するために、物質への侵入深さが異なる電子線・レーザー・X線を用いた分析法を組み合わせ、粒子の表面・内部における部位毎の化学状態を分析する手法の開発を目的に研究を進めてきた。令和4年度は本研究課題の最終年度であり、これまで検討を行い最適化してきた各分析手法を、原子力施設で長期保管された二酸化ウラン粒子に適用し、その実用性を検証した。微粒子の分析前処理には、微粒子を炭素基板上に直接回収する手法を用いた。まず、マイクロビームX線を用いた微粒子内部の分析結果から、微粒子内部では二酸化ウランが20~30%程度酸化されており、二酸化ウランの酸化生成物として八酸化三ウランと過酸化ウラニルが混在することがわかった。一方、顕微ラマン分光法による測定結果から、微粒子表面では八酸化三ウランが存在せず、二酸化ウランと過酸化ウラニルが存在することがわかった。粒子再表面の分析を電子線後方散乱回折法で行った結果、明確な回折パターンが生じなかったことから、アモルファス的な過酸化ウラニルが粒子表面で生成したと考えられる。これらの結果から、二酸化ウラン微粒子が長期間の保存によって変化した際、表面と内部で主要な化学形が異なることを明らかにした。以上の結果から、本研究における複数の分光法を組み合わせた新たな微粒子分析法の開発によって、ウラン微粒子の表面と内部における部位別の化学状態分析が可能になった。ウラン微粒子内部の化学状態は発生起源に由来するが、微粒子表面の化学状態は水への溶解性などウランの移行挙動と密接に関連する。開発した手法は、微粒子内部の元々の化学形の判別による核物質取扱い履歴の推定のみならず、微粒子表面の化学形の判別によって環境中でのウラン移行挙動の推定などにも有効であると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
KEK Proceedings 2022-2
巻: - ページ: 148-153
Inorganic Chemistry
巻: 61 ページ: 20206~20210
10.1021/acs.inorgchem.2c03208
https://nsec.jaea.go.jp/nuclchem/index.html