Au、Pt、およびAuPt合金ナノ粒子をナノダイヤモンドに担持した触媒は、37°Cで水素を還元剤として、酸化型補酵素β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)のNADHへの水素化を触媒した。 Au触媒によるNAD+水素化活性は、Auナノ粒子のサイズと担体材料の塩基性に強く依存し、3nm以下の金粒子を塩基性担体(CeO2、ハイドロタルサイト(HT)、ZnO等)に固定したときのみに水素化が進行した。対照的に、PtおよびAuPt合金ナノ粒子(AuPt/ND)は不活性担体であるナノダイヤモンド(ND)に固定した場合も高い活性を示し、1気圧のH2下でNAD+水素化にAu触媒より著しく高い触媒活性を示した。 NADHの収率と選択性は、AuPtおよびAu触媒では、pHに依存した。 AuPt/NDのX線光電子分光法の測定結果は、AuとPtの間の電子相互作用(Auδ-およびPtδ+の存在)を示唆した。これは、Au触媒ではAuと塩基性担体間、AuPt触媒ではAuーPt間においてH2が非等方的に解離(H2→H+ + H-)することを示唆している。一方、Pt/NDではH2は等方的に解離(H2→2H・)するため選択性にpH依存性を示さないと考えられる。 乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)によるピルビン酸の還元反応に担持Au、PtおよびAuPt触媒を添加すると、これらの金属ナノ粒子触媒は、LDH触媒反応を阻害することなくNAD +をNADHに変換し、その場で形成されたNADHは、ワンポットで酵素によるピルビン酸還元に消費され乳酸が生成することが確認された。不均一系金属ナノ粒子触媒と酵素を組み合わせたシステムが、化学量論量必要とされる補酵素の量の削減に寄与し、持続可能な酵素有機合成の有望な候補であることを実証した。
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