研究課題/領域番号 |
19K15611
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
三原 義広 北海道科学大学, 薬学部, 講師 (90733949)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 吸着剤 / 水質浄化技術 / 汚染物質吸着ゲル / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
アルギン酸ゲル粒子にグルコースとイースト菌を内包すると、発酵によってゲル粒子は水中や水底で気泡を発生させつつ液面まで浮上し、液面で気泡が消失すると沈降し、気泡を発生させながら浮上と沈降を繰り返すゲルの自律浮沈現象を起こすことができる。浮沈回数、速度、期間のデータ解析は、タイムラプス記録を基に、駒込ピペットを用いた手作業による自律浮沈ゲル作製の原理確認を終了した。ゲル粒子の配合組成による浮沈速度および期間を基に、将来の量産化に向けた研究を継続する。基本機能の実用化のために、アルギン酸ゲルビーズ(支持体)に、デンプンとイーストの粉末を内包したものを内層部として作製し、水槽に投入して材料の浮上と沈降の機能を確認する。内層部の表面に酸化鉄(磁性材料)や酸化セリウムを被覆し、これを外層部として構築し、フッ化物イオンの吸着速度や磁石によるゲルビーズの回収率を検証した。さらに、自律浮沈ゲルにセルロースナノファイバー(以後、CNF)を添加すると、垂直浮沈運動のみだった自律浮沈ゲルに、水平浮沈機能を付与することの原理確認をし、特許出願をしている。現状は、浮沈速度が遅く、水浄化に時間がかかっている。自律浮沈ゲルの基本処方だけでは解決できず、何かしらの添加物が必要である。また、グルコースやイースト菌がゲル粒子から漏れ出している可能性を示唆しており、その対策も必要である。これらを解決し、今後は短時間での水浄化を目指すため、ゲルの高機能化を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実環境における材料の投与と回収の両方に配慮した新たな汚染除去および浮沈技術と汚染物質の吸着、回収機能を有する直径1-5 mmの水質浄化材の開発を行った。浮力の維持では、シラスバルーンを内包したゲル粒子の水面での回収率は100%であった。 自律浮沈ゲルに水質浄化剤(もしくは吸着剤)を内包した水浄化ゲルで、有害物質の吸着が可能であることを、フッ素の吸着実験により確認した。 現状は、フッ素の吸着実験を進めている。将来の製品化に向けて、吸着速度をアップし、さらに吸着できる対象物質の多種化を図る。自律浮沈ゲルにセルロースナノファイバー(以後、CNF)を添加すると、垂直浮沈運動のみだった自律浮沈ゲルに、水平浮沈機能を付与することの原理確認をし、特許出願をしている。自律浮沈ゲルの垂直+水平浮沈機能が可能となったのは、自律浮沈ゲルにCNFを添加したことによる。これにより、イースト菌が担持されやすく、浮沈挙動が、垂直浮沈だけでなく水平浮沈もできるようになった。水平浮沈は、吸着する際に有効な挙動となるため、浮沈吸着機能として活用できる。
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今後の研究の推進方策 |
サイズの不均一さ、同一処方でも挙動が異なる原因としては、『手作業により作製』が大きく影響していると考えられる。手作業での研究には限界があり、また、評価も人の目に頼っている現状においては、研究を加速さえることもできずにいる。 これらを解決するためには、自律浮沈ゲルの性能に影響する要因を解明しなくてはいけない。そのための手段として、一つはゲル粒子の作製を半自動化し、性能の均一化を図ることが考えられる。研究の大前提として不安定要素を取り除く必要があり、現状一番の不安定要素は人の手作業である。人による手作業を削減し、機械化を進めることにより、初めて処方の検討などにも移行ができる。 本研究では、これらを解決し、電力不要で多用途利用可能な革新的水浄化システムを提供することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による感染症予防対策として、北海道では該当年度の3月から7月度にかけて実験室での活動が制限されたため、研究計画書で掲げていた消耗品費および旅費を支出できなかった。
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