研究課題/領域番号 |
19K15614
|
研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
亘理 龍 一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, 主任研究員 (00638009)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 二酸化炭素 / 水素化反応 / 銅ナノ粒子 / アミジン含有ポリマー |
研究実績の概要 |
本研究では、高い電子供与能が期待されるアミジン類を活用し、均一系・不均一系両面からのアプローチにより、二酸化炭素の水素化反応によるメタノール合成に資する新規触媒の開発に取り組んでいる。 本年度は、アミジン含有ポリマー担体に構造制御された銅ナノ粒子を構築すること、特に、高活性が期待できる平均粒子径10 nm以下のナノ粒子の創製を目的に、DBU修飾ポリスチレン (PS-DBU) 上への各種条件における銅ナノ粒子の合成と解析、ならびに、得られた銅ナノ粒子を用いた二酸化炭素の水素化反応を検討し、下記の成果を得た。 DBU含有量の異なる各種PS-DBUを用いて銅ナノ粒子合成を行い比較したところ、含有量の増加に応じて径の小さいナノ粒子が得られた。特に、2.3 mmol/gのPS-DBUを用いた場合に、平均粒子径が10 nmの粒子が形成された。また、SPring-8産業用専用ビームライン (BL16B2) におけるXAFS測定により、銅ナノ粒子の0価/1価比が明らかになり、ナノ粒子の調製条件によって変化することがわかった。 得られた種々の銅ナノ粒子を二酸化炭素の水素化反応に用いることで、触媒構造と活性との相関が明らかになった。具体的には、平均粒子径が小さく、1価種の存在比が大きい銅ナノ粒子ほどギ酸塩生成の触媒活性が向上し、特に、平均粒子径10 nm、0価/1価がおよそ1/1で存在する銅ナノ粒子触媒を用いると、二酸化炭素圧力40気圧、水素圧力40気圧、反応温度100 ℃の条件で、最大で触媒回転数2440でギ酸塩が得られた。この結果は、前年度にビスアミジン銅錯体触媒が示した最高活性の約1.5倍に達しており、アミジン含有ポリマー担体への銅ナノ粒子形成を基軸とする触媒設計が妥当であることを裏付けた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PS-DBU上への銅ナノ粒子の合成において、各種条件検討の結果、平均粒子径10 nmの構造制御に成功した。また、各種分析をとおして銅の価数比を明らかにした。さらに、同定した粒子径と価数比に応じて、二酸化炭素の水素化反応における銅ナノ粒子の触媒活性が変化することも明らかになり、二酸化炭素の水素化反応におけるアミジン含有ポリマー担体の利用指針と銅ナノ粒子の合成手法を確立することができた。 以上より、おおむね順調な進展と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
二酸化炭素の水素化反応における高い活性が示された多座アミジン銅錯体触媒、ならびに、銅ナノ粒子触媒を用いて、カルボン酸誘導体や二酸化炭素の水素化反応によるアルコール合成の検証を行い、反応条件や触媒構造の検討をとおして、低温条件におけるメタノール合成の達成に向けて研究を推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染流行の継続により学会出張予定を取りやめたことによって次年度使用額が発生した。次年度使用額は、物品費として試薬類の調達に使用する予定である。
|