本研究では、高い電子供与能が期待されるアミジン類を活用し、均一系・不均一系両面からのアプローチにより、比較的低温下における二酸化炭素の水素化反応によるメタノール合成に資する新規触媒の開発に取り組んだ。 本年度は、これまでに得た種々のアミジン―銅触媒を用いて、オートクレーブによる水素加圧条件におけるカルボン酸誘導体ならびに二酸化炭素の水素化反応を検討し、触媒設計の合理性を検証した。その結果、DBU修飾ポリスチレン(PS-DBU)上に構築した銅ナノ粒子が100 ℃の温度条件で不均一系触媒としてはたらき、カルボン酸誘導体の水素化反応を促進することを見いだした。また、同様の温度条件において二酸化炭素の水素化反応が進行し、前年度までに見いだしたギ酸塩のほか、微量ながらメタノールの生成を確認した。 低温条件における水素化反応を可能とした新規銅ナノ粒子触媒について構造解析を進めたところ、既存の銅ナノ粒子触媒とは異なり、銅1価種として銅アルコキシドを含む新規なナノ粒子構造であることを見いだした。銅アルコキシドによる水素の不均等開裂が鍵となり、低温下における水素化反応が可能になったと考えられた。 今後、メタノール生成条件の最適化や同位体元素ラベル試験による検証を必要とするものの、本研究をとおして、アミジン類の持つ高い電子供与能と銅への配位能を利用した新規な水素化触媒設計の合理性を裏付け、低温条件下における二酸化炭素の水素化反応によるメタノール合成に資する成果を得た。
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