昨年度においてモデル化した分子クラウディング効果を発揮する高分子ゲル網目の物性評価および銅的光散乱法によるダイナミクス解析を実施した。本研究で用いたゲル網目の主骨格となる高分子には、高い生体適合性と温度応答性を有するポリ(オリゴエチレングリコールメタクリレート)と架橋剤を選択し、フリーラジカル重合により合成した。当該年度では、これらゲルの力学特性とその温度依存性を評価した。その結果、合成したゲルは温度上昇により脱水和した疎水性高分子鎖同士が互いに会合・凝集することで体積変化を示し、弾性率の増加を引き起こすことを見出した。本知見を活かし、温度変化によりゲル網目のサイズやタンパク質をはじめとする生体分子との相互作用を変化させ、分子クラウディング効果をコントロールする手法を新たに導入することができた。上記の成果は当該年度に学術論文として認められた。これらに加え、モデルゲルのゲル化相図を作成することで、高分子濃度・架橋剤濃度の制御範囲を確認し、分子クラウディング環境の自在制御を達成した。 更に、当該年度では自作で組み立てた動的光散乱(DLS)ー蛍光相関分光法(FCS)装置を適用し、ゲル網目内部での蛍光タンパク質および高分子鎖のダイナミクス評価を実施した。はじめに、FCS測定の精度向上に向け、マーカーとなる蛍光微粒子分散液を適用し、光学調整を行った。次に、生体分子として蛍光タンパク質のダイナミクスを精度良く評価・解析できることを確かめることができた。
|