本年度は、ウレアエンドキャップ法を用いたシクロデキストリン含有高分子ロタキサンの開発に関し、大きく以下の3点の研究実績が得られた。 (1)高分子ロタキサン合成に使用する、末端にイソシアナート基を有する高分子の合成について検討した。アシルアジド基を有する重合開始剤から、リビング重合することにより得られるポリマーは、加熱するとCurtius転位反応を起こし、アシルアジド基がイソシアナート基に定量的に変換される。この重合開始剤に水酸基を組み込むことで、開始剤は加熱によってイソシアナート基と水酸基を含むAB型モノマー構造となるため、自身で重付加反応を起こし、対応するポリウレタンを与えることが分かった。また、この重付加反応と先述のリビング重合によるポリマー合成を組み合わせることで、簡便にブロックポリマーの合成が可能であることを明らかにした。このブロックポリマーを用いることで、ブロックポリマーを主鎖に有する高分子ロタキサン、ポリロタキサンの合成が可能である。高分子ロタキサンの合成、修飾は一般的に容易でないため、本研究の成果はその合成法の発展に寄与すると考えられる。 (2)ポリウレタン構造中に適当なハードセグメント、ソフトセグメントを導入すること得られる、セグメント化ポリウレタンは、その構造に由来する高い力学特性を示すことが知られている。このセグメント化ポリウレタンの構造中に、ロタキサン架橋構造を導入することで、靱性が増加することが明らかとなった。この挙動は、ロタキサン架橋構造による応力緩和に由来すると考えられる。 (3)シクロデキストリン型ロタキサンのシクロデキストリンをランダム修飾することにより、従来よりも簡便な方法でロタキサン架橋剤が得られることを明らかにした。
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