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2020 年度 実施状況報告書

生体回路反応から着想を得た汎用ポリマーブラシコーティング技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K15624
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

佐藤 知哉  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (40783874)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードポリマーブラシ / 大面積 / 原子移動ラジカル重合法 / 濡れ性 / 撥水性 / 撥油性 / 防汚性 / 着氷防止
研究実績の概要

高分子鎖を基材に固定した「ポリマーブラシ」は、その特異な構造から従来の有機薄膜とは異なる物性を示すため学術的にも産業的にも興味深い。ポリマーブラシの合成法としては、基材表面に固定された重合開始性官能基から精密ラジカル重合などを用いてポリマーを成長させる手法がよく用いられてきた。しかし、多くの従来法は、空気中の酸素により反応が停止する機構を用いるため、密封容器を使用し脱酸素条件を達成する必要があるため大面積基材への適用が困難であった。
我々は、この弱点を克服し、ハケ塗りの様式で実施可能な精密ラジカル重合(Paint-on法)を開発し、実用基板サイズの親水性ポリマーブラシの試作に成功した。本研究は、上記手法をさらに改良しポリマーブラシの実用化に向けた合成手法の開発を目的としている。
本年度は、混合溶媒を用いてPaint-on法を実施することで、従来法では達成困難であった疎水性ポリマーブラシの大面積化を実施し、得られたポリマーブラシの実用化に向けた機能の評価と合成技術の詳細の評価を実施した。具体的には、水への溶解性が低いアクリルモノマーをPaint-on法に適用するために、種々のアルコールを溶媒に水を共溶媒に用いた重合溶液に重合開始層で被覆した基板を浸漬させることで疎水性ポリマーブラシの作製を行った。得られたポリマーブラシ表面の濡れ性、防汚性、着氷防止機能等を評価することにより、大面積ポリマーブラシが実用的な表面機能を有することを見出した。また、センサーを用い、Paint-on法の溶液中での反応を追跡し、溶液寿命の延長に重要な要素が還元剤以外以外にも存在している可能性を見出した。
以上のように、ポリマーブラシの簡易/大面積合成に重要な重合溶液の設計指針の要素をこれまでに明らかにしている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では、新規な酸化還元機構に基づくポリマーブラシ合成手法の確立を目的としている。これまでに、従来技術では実現し得なかった大面積な親水性/疎水性ポリマーブラシの合成に成功し、その表面機能の分析と応用事例の確認を完了している。
本年度は、疎水性ポリマーブラシの合成と、その撥水性、撥油性、防汚性、着氷防止機能等を確認し、ポリマーブラシの実用性を証明した。また、センサーを用い、Paint-on法の溶液中での反応を追跡し、溶液寿命の延長の鍵となる要素を明らかにした。一方で、移動制限等により使用可能な装置が制限された影響もあり、ポリマー成長メカニズムの詳細な分析には十分な知見が得られていない。
以上より、本研究課題は当初計画よりもやや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

令和3年度は、前年度までに得られた知見を踏まえ、我々のポリマーブラシ合成技術における反応メカニズムの詳細の分析とその改良を実施する。
具体的には、溶媒や触媒、モノマー種の異なる条件において各種分析機器やセンサーを用いた溶液中の酸化-還元機構を比較し、合成されたポリマーブラシの表面機能を比較することで、反応の最適化を行う。また、基材上に存在する重合開始性官能基密度を調整することにより、より短時間で十分な膜厚が得られる実用ポリマーブラシ合成法の確立に向けた設計指針も明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

令和2年度にXPS測定を実施する予定であったが,緊急事態宣言等により移動制限があったため、また、当該装置の故障があったため計画を変更する必要が生じ、未使用額が生じた。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Simple and Scalable Protocol for Producing Hydrophobic Polymer Brushes Beyond Wafer-Scale Dimensions toward Real-Life Applications2021

    • 著者名/発表者名
      Tomoya Sato, Gary J. Dunderdale, and Atsushi Hozumi
    • 雑誌名

      ACS Appl. Polym. Mater.

      巻: 3 ページ: 1395,1405

    • DOI

      10.1021/acsapm.0c01244

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] “Paint-on” SI-ATRP法を用いて作製した疎水性ポリマーブラシの特性評価2021

    • 著者名/発表者名
      佐藤知哉,中村 聡,浦田千尋,穂積 篤
    • 学会等名
      第70回高分子学会年次大会
  • [学会発表] 疎水/親水性ポリマーブラシの簡易/大面積合成技術2021

    • 著者名/発表者名
      佐藤知哉,浦田千尋,穂積 篤
    • 学会等名
      関西接着ワークショップ2020年度第2回研究会
  • [学会発表] 疎水/親水性ポリマーブラシの簡易合成技術2020

    • 著者名/発表者名
      佐藤知哉,浦田千尋,穂積 篤
    • 学会等名
      第69回高分子学会年次大会
  • [学会発表] 種々の基材の表面高機能化を可能にするポリマーブラシ簡易合成技術の開発2020

    • 著者名/発表者名
      佐藤知哉,浦田千尋,穂積 篤
    • 学会等名
      2020年 繊維学会秋季研究発表会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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