研究課題/領域番号 |
19K15628
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
Li Xiang 東京大学, 物性研究所, 助教 (30759840)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高分子 / ゲル / 不均一性 / 小角散乱 / 動的光散乱 |
研究実績の概要 |
星形高分子を用いて3次元に発達した高分子網目構造を形成させ、星形高分子の初期充填率と完成する高分子網目の空間不均一性について体系的で定量的な研究を行った。プレポリマーの初期の空間充填状態が完成する高分子ゲル網目の空間均一性に大きな影響を与えることを発見した。空間充填率が十分に高い場合は、極めて均一な高分子網目が形成されるが、空間充填率が低い場合、完成した網目内にはナノサイズの空洞が生じた。また、プレポリマーの空間充填率が高い場合でも、溶媒の質を落とすことによって、複数のポリマーが同じ空間を占有する状態(ナノ凝集)が形成され、そのナノ凝集体は完成した高分子網目にトラップされ、空間不均一性の要因になることが明らかになった。我々は、高コヒーレンスレーザー光による静的レーザースペックル撮影によって、視覚的に空間不均一性の程度を評価することに成功した。また、静的光散乱と小角X線散乱を組み合わせることで、ナノからサブマイクロメートルまでの幅広いサイズ領域での構造評価を行い、空間不均一性のサイズ・体積分率を定量的を評価することに成功した。さらに、動的光散乱を用いてこれらの空間不均一性が高分子ゲルの網目のダイナミックスに与える影響も詳細に調べ、いずれの空間不均一性も部分ヘテロダインモデルによってうまく記述できることを明らかにした。この結果は、高分子ゲルの空間不均一性の存在は、うまく形成されている網目のダイナミックスへほとんど影響を及ぼさないことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の空間不均一性を含むゲルの作成やその構造・ダイナミックスの定量的な評価について成功し、ゲルの作製手法・評価手法を確立した。さらに、小角X線散乱や小角中性子散乱を用いた変形下での構造評価、準弾性中性子散乱を用いた変形下でのゲルの構造と力学の相関についても実験をすでに実施し、現在データ解析を進めている。小角X線での実験では、X線によるサンプルへのダメージが予想以上に深刻であることが判明し、現在そのダメージを定量的に評価し、対策を進めている。新型コロナ感染症により、数ヶ月単位で研究が遅れてはいるが、2019年の内にかなりの実験を実施できたため、現在研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後当初の計画通りに、様々な変形下でのゲルの構造変化を散乱を中心とした手法を用いて、多角的に解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部購入予定品の納期が遅れたため。
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