昨年度は、自作した最大20倍程度大変形が可能な伸長試験機の電動化を行い、さらに試験途中で有機溶媒等の蒸発を防ぐために有機溶媒耐性が極めて高い特殊なゴムパッキンを作製した。これまで作製した均一ゲルは非常に大きな変形が可能であり、特徴的な散乱プロファイルを得ることに成功した。当該プロファイルについての解析は今後継続的に進めていく。 また、意図的に構造欠陥を導入したゲルについても系統的な結果を得ることに成功しており、高分子の熱揺らぎとゲルのエントロピー弾性・エネルギー弾性についての議論できるデータセットが揃った。当該データセットを用いて、構造欠陥と熱揺らぎを分離して解析する手法についての構築も行った。 従来より懸念点であったX線によるサンプルダメージには関しては、サンプルのX線の吸収を抑えることで大幅な改善が見られた。しかし、やはり同じ位置で長時間照射することによる影響は大きく、位置を移動させながら測定することが必須である。 SAXSの解析ソフトについても大幅に改良し、半自動で2次元散乱像を1次元プロファイルに適切に変換することに成功した。1次元プロファイルに関しては、立体角補正はもちろん、測定時間、透過率、サンプルの厚み、bkg散乱、絶対強度化等の一連の補正が自動で行われる。そのため、in-situ SAXSを行いながら、ほぼリアルタイムで定量的な1次元散乱プロファイルの評価が可能となり、実験の効率・精度が大幅に上昇した。解析ソフトはGitHubにてRed2Dとして公開している。
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