研究課題/領域番号 |
19K15631
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
古賀 舞都 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (80733477)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | X線散乱 / カーボンブラック / 燃料電池 / 微粒子分散系 / 高分子 |
研究実績の概要 |
燃料電池やリチウムイオン電池の電極作製に利用するスラリー液や多孔質電極構造において、ポリマー被覆率や空隙率が物性へ影響すると考えられ検討されているが、一方でそれらの有効な解析手法は依然として確立されていない。X線散乱法では、試料の表面および質量フラクタル次元を解析することができる。表面フラクタル次元は物質の表面粗さを示し、質量フラクタル次元はある体積中に物質が詰まっている程度を表している。そこで、表面フラクタル次元は被覆率を、質量フラクタル次元は空隙率に関連するパラメータと予想した。本研究では、X線散乱法から解析したフラクタル次元と被覆率や空隙率といった構造特性との関連性を明らかにし、スラリー液や多孔質体の解析を行うことを目的とする。当該年度は、適切なカーボンブラック/ポリマー分散液および分散液を乾燥させた固体膜の作製に主に取り組んだ。分散液中のポリマー濃度を増加させると、粒子の分散性が悪くなり一部沈殿を生じるものがあった。また、乾燥途中に相分離が起こり均一な固体膜を作製できないものがあった。分散液および固体膜についてX線散乱測定を実施したが、散乱強度プロファイル中に明確な変化は確認できなかった。分散液中でのカーボンブラックおよびポリマーの分散性の改善と粒子径分布について検討が必要である。次年度以降、表面修飾したカーボンブラックや粒子径の制御されたシリカ粒子を利用し、分散液調製条件の検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者の異動に伴い、研究環境を新たに構築する必要性が生じたため、当初使用予定であった機器が使用できなくなったり試料作製環境が異なったため、進行に遅れが生じた。分散性改善のための表面修飾したカーボンブラックは既に利用できる状況にあるため、次年度以降、より詳細な調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、分散液中のポリマーおよび微粒子の分散性の改善に取り組む。表面修飾したカーボンブラックを利用することで、分散性を改善しポリマー被覆量を変化させられるものと考えている。ポリマー濃度の異なる分散液の調製が困難な場合には、分散制御に関して報告例のあるシリカ粒子を利用して実験に取り組む予定でいる。作製した分散液および乾燥膜についてX線散乱法により解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の変更があり、当初の予定通り実験を進めることができなかったため、予定していた旅費を使用しなかった。消耗品等の利用が想定より少なかったため、予算を予定通り執行できなかった。また、研究の進捗状況を考え、当初購入予定であった備品の購入を延期した。上記の理由により、次年度使用額が生じた。
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