研究課題/領域番号 |
19K15637
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
塚田 学 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (60632578)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ゾル-ゲル反応 / シロキサン / シルセスキオキサン / アルコキシシラン / 架橋型アルコキシシラン / 自立膜 / 熱伝導率 |
研究実績の概要 |
本申請課題の目的は、合成化学者の経験と勘に頼っていたトリアルコキシシランの加水分解重縮合反応(ゾル-ゲル反応)の実験結果をデータ科学的手法により解析し、実験結果を予測することである。 昨年度に続き、架橋型アルコキシシランのゾル-ゲル反応による架橋型ポリシルセスキオキサン合成における反応時の水分量と分子量の関係について実験データを集めた。特に、昨年度十分に検討が行えていなかった架橋部位を有するアルコキシシラン類の反応を中心に行った。 昨年度および今年度で反応を行った架橋型アルコキシシラン類の理論計算を行い、それぞれの化合物の最適化構造を元に、HOMOおよびLUMOのエネルギーやそれらの分布、また各原子間の結合距離などを算出した。 ここまでの実験結果および理論計算の結果を元にして、LASSO法を用いることで未知の架橋型アルコキシシランのゾル-ゲル反応の結果(分子量)が予測できるかを検討した。具体的には、架橋部位が炭素鎖数1~2でそれぞれ単結合、二重結合、三重結合をもつ4種類の架橋型アルコキシシランの加水分解重縮合反応の結果と理論計算の結果を元に、架橋部位がフェニレン基あるいはプロピレン基である架橋型アルコキシシランの反応時の水分量と分子量の関係を予測した。種々のパラメーターで検討を行った結果、少ないデータ数でもある程度の関係性を見出すことができることがわかった。本成果は、現在主流のビックデータを元にした研究と異なり、用いるデータ数が少なくても一定の実験結果の予測ができることを示した興味深い結果となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題の目的は、合成化学者の経験と勘に頼っていたトリアルコキシシランのゾル-ゲル反応の実験結果をデータ科学的手法により解析し、実験結果を予測することであった。今年度の研究により、少ない実験結果と理論計算の結果を用いたデータ科学的手法による解析でも、未知のトリアルコキシシラン(本研究では架橋型アルコキシシラン)の実験結果を予測できることを見出した。また、この成果を学術論文として発表することができたため、おおむね順調に進展している、と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
申請当初は今年度で終了の予定であったが、コロナウイルス蔓延による緊急事態宣言の影響により、当初予定していた実験の一部が完結していない。そのため、期間延長申請を行い、今年度実施できなかった内容について研究を行う。また、本研究の成果を学会で発表することで、広く周知していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス蔓延による緊急事態宣言などがあり、実験中断期間があった。そのため、当初計画における一部の実験内容がまだ完結していない。また、学会のキャンセルやオンライン化により発表件数が予定していたよりも大幅に減少し、旅費も利用しなかった。次年度は、上記で報告した実験を完結するとともに、本申請課題の成果を学会で発表していく予定であり、それらの活動に予算を利用する。
|