本年度は,高分子化イオン液体準希薄非からみ合い溶液の粘弾性を記述する静電遮蔽モデルの精査と,得られたモデルの検証を行った.具体的には,(1)修正遮蔽長を考慮した準希薄非からみ合い溶液の粘弾性モデルは,高イオン液体濃度領域で観測された比粘度と緩和時間の増加を予測できたが,実験値と予測値に誤差があった.この誤差を説明するため,塩濃度に依存しない粘弾性パラメータを導入し,高分子電解質にはたらく静電相互作用が高イオン液体濃度で完全に遮蔽される効果を考慮した.したがって,修正遮蔽長の効果と静電相互作用の完全遮蔽による効果,2つの効果を取り入れた新規静電遮蔽モデルを確立した.この新規静電遮蔽モデルを用いた場合,実験値と予測値の良好な一致が観測された.(2)溶媒の誘電率を実験により測定し,各イオン液体濃度における遮蔽長を正確に見積もった(3)高分子の添加によるイオン液体構造の変化がないことを,複素弾性率測定により確認した(4)異なる高分子濃度の溶液を調整し,比粘度と緩和時間のイオン液体濃度依存性を測定した.その結果,比粘度,緩和時間ともに,そのイオン液体濃度依存性は高分子濃度によって変化しないことがわかった.この結果は,本研究により確立した静電遮蔽モデルの予測と一致した.(5)静電相互作用の完全遮蔽効果を説明する粘弾性パラメータの導入が妥当であることを,そのパラメータの高分子濃度依存性が電気的に中性な高分子溶液のスケーリング則に従うという結果から確認した.
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