今年度は、ペプチドからなるポリマーベシクルの集合挙動、タンパク質の内包挙動の評価方法および植物への輸送方法を確立した。評価を方法を確立するために、アニオン性のオリゴサルコシンを有するグルタミン酸およびカチオン性のを有するポリリジンからなるポリマーベシクルの評価を行った。これらの水溶液を混合させ動的光散乱(DLS)測定を行なった。その結果、100 nm程度の粒径の集合体が形成することが分かった。またcross section 走査型電子顕微鏡(FE-SEM)観察より、内部の空洞を有する集合体が観察された。これらのことから、ベシクルの構築に成功した。モデルタンパク質としてリボヌクレアーゼA(RNase)を用いて内包挙動を評価した。PICsomeが構築する際に、ローダミン修飾されたRNaseを混合しておくことで ベシクル内部へRNaseを内包させた。ベシクルに内包されなかったタンパク質を透析により除去を行った。これを用いて蛍光相関分光(FCS)法に内包挙動を評価したところ、RhB- RNaseの拡散時間の増大が確認され、RhB- RNaseのポリマーベシクルへの内包が確認された。これらの結果から、酵素のPICsomeへの内包に成功したと考えられる。また、RNaseが活性を維持していることが明らかとなった。さらに、ベシクルを植物輸送にもちいるために、細胞膜透過性ペプチドで修飾したRNase内包PICsomeを植物に導入した。その結果、植物内部からRhB- RNaseの蛍光が確認され、植物にベシクルを送達する方法を確立したと考えられる。
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