研究課題/領域番号 |
19K15644
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
曽川 洋光 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (90709297)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酵素重合 / ポリペプチド / ブロックポリマー |
研究実績の概要 |
エラスチンやレジリンに代表される弾性タンパク質は,合成ゴムと同程度の弾性率を示しながらもそれを凌ぐ高い復元力を示す。本申請研究では化学酵素反応を利活用することで,弾性タンパク質中に頻出する鍵アミノ酸配列を模倣したポリペプチドを合成する。今年度はグリシン-プロリン-グリシンのトリペプチドおよびグリシン-アラニンのジペプチドを酵素反応により重合し,得られたオリゴペプチド鎖を連結することで,蜘蛛糸タンパク質を模倣したブロックポリペプチドの合成を検討した。グリシン-アラニンのジペプチドに対してはプロテアーゼの一種であるパパインを触媒に用い,リン酸緩衝溶液中,40°Cの条件で反応させることで,対応するペプチドを得た。また,グリシン-プロリン-グリシンのトリペプチドについては,酵素としてプロテイナーゼKを用いて反応を行うことで,水溶性の対応するオリゴペプチドを得た。CD,VCD,WAXDを用いた構造解析の結果,グリシン-アラニン由来のオリゴペプチドはβ-シート構造を形成し,グリシン-プロリン-グリシン由来のオリゴペプチドはPPIIヘリックス構造を形成していることが明らかとなった。次いで,得られたこれら二種類のオリゴペプチド鎖を後重縮合反応により連結した。NRM,SEC,MALDI-TOF MS測定の結果,反応後には反応前よりも高分子量体のピークが観測され,後重縮合による分子鎖の伸長が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者の異動,COVID-19の影響による実験室利用の制限等により,申請研究を進めるための十分な時間の確保や実験の実施が困難であったため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られたブロックコポリペプチドは,反応前よりも高分子鎖の延長が確認されたが,その明確な構造解析は十分に行えていなかった。今後はこれを明らかにするとともに,化学酵素重合により合成した弾性タンパク質模倣ペプチドを天然ゴムやポリウレタンに添加した際に、その力学特性に及ぼす影響を調査していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の異動に伴う実験実施場所の変更,自然災害により,変更が生じた。 翌年度分として請求した助成金については,試薬等の購入費および成果発表に伴う費用として利用する予定である。
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