近赤外光受光素子に利用可能な近赤外吸収有機半導体の開発を目的とし、アセンジカルコゲノフェンジオンと呼ばれる、縮環キノイド構造を基盤とするドナー-アクセプター-ドナー型の有機半導体の合成と評価を行った。合成した一連の有機半導体は中性閉殻分子であるにも関わらず、薄膜における吸収帯が1000 nmから1800 nmにも及ぶ近赤外吸収を示した。この薄膜を活性層とした有機電界効果トランジスタは大気中で安定な電荷輸送を示し、電荷移動度が最大で0.2 cm2/Vs程度の良好な半導体特性を示し、本縮環キノイド構造が近赤外吸収有機半導体における有望なビルディングユニットであることを明らかにした。
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