次世代の再生可能エネルギーとして期待される有機薄膜太陽電池(OPV)の実用化に向けてさらなる高効率化を達成するためには、より高性能なn型半導体を開発することが極めて重要な課題である。本研究では、これまでに研究代表者が独自に開発してきたFBTzEと呼ばれる多環芳香族骨格を中心アクセプター骨格(A1)とし、これをドナー(D)および異なるアクセプター(A2)と連結した高結晶性の新規A2-D-A1-D-A2型n型半導体FBTzE4T-IC-ODを開発してきた。しかしながら、合成したn型半導体は目標とする高い結晶性を実現できたものの、非常にかさ高い可溶性側鎖を複数導入しているにもかかわらず、溶解性が著しく低いといった問題点があった。 そこで、Dユニットに単純なアルコキシチオフェンを用いることで、高い平面性を維持したまま分子形状が湾曲し、高い溶解性と結晶性が両立できると考えた。実際に目的のn型半導体を合成したところ、前駆体までの単離に成功した。しかしながら、最終段階である縮合反応をおこなったところ、目的の生成物が得られたものの、精製による単離はできなかった。これはおそらく、化合物が不安定であり、精製中に分解したためと考えている。 この結果を受け、同様に分子形状が湾曲するDユニットであるジチエノピラン(DTP)骨格を導入したn型半導体の合成に着手した。これまでと同様に脱水素型カップリングにより中心A1ユニットであるFBTzEをDTPと連結させたところ、反応性が低いため、合成ができなかった。そこで直截アリール化による合成を検討したところ、反応条件を最適化した結果、わずかではあるものの目的の生成物を得ることに成功した。今後、さらなる変換反応を経て新たなn型半導体を開発し、高効率OPVを目指す。
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