研究課題/領域番号 |
19K15653
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川又 透 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90638355)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 非晶質合金 / 中距離秩序構造 / 短距離秩序構造 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、概ね当初の計画通りに非晶質合金試料作製およびAXS-RMC解析を遂行し、特に Zr10Fe90 および Zr10Co90 非晶質合金について一連の構造解析を完了することができた。これらの非晶質合金は、本研究の目標であるAl基非晶質合金と同じく一成分に富んだ組成であることから、割合の少ない元素が非晶質構造中のTSRO(幾何学的短距離秩序)およびCSRO(化学的短距離秩序)の形成に寄与するメカニズムについて重要な知見を得ることが可能である。これらの非晶質合金の構造解析結果から、従来の非晶質合金において報告されていないZr-Zr相関の短距離化を確認することができた。一方で最近接領域のTSROおよびCSROはDRP(剛体球充填)モデルと大きな差はなく、DRPモデルと近似可能であるという知見が得られた。CNA-Bernal多面体解析の結果から、Zr-Zr相関の短距離化が確認された非晶質合金では、第二近接までを結ぶ各ルートペアにおける連結構造単位の距離も短距離化し密なパッキングをしているということが示唆された。また、合金組成で多数を占めるFe-FeおよびCo-Co相関はBCCに近い特徴を示す二体相関関数を示すことが明らかとなった。これらの特徴は明瞭なプレピークを示す非晶質合金とは異なっており、中距離秩序構造の形成には、構成元素間の化学的相互作用が強くすること、一方で割合の少ない元素(全体の元素比では概ね10%以下と予想される)では特殊な短距離秩序構造が生じていることが確認された。このほか、中距離秩序構造の発達した三元系非晶質合金としてZrCuPt系非晶質合金の構造解析を実施した。これらの研究成果について金属学会秋期講演大会(2019)などで報告を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、主要なターゲットとして想定していたAl基非晶質合金の作製が困難であり、計画通り多種類の合金組成を作製することはできなかったが、一方でAlY二元系非晶質合金の作製および一部のX線異常散乱実験は既に成功していることから、Al基非晶質合金の構造解析を試みる準備は完了している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究から得られた知見である、割合の少ない元素が非晶質構造中で見せる特殊な構造的役割を考慮した上で、AlY非晶質構造解析のX線異常散乱実験およびRMCによる構造解析を推進する。必要によっては、パーシステントホモロジーなどの新規的解析手法を用いるための環境を整える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)申請時に、令和元年度の購入を予定していた消耗品(X線管球:Cu)に交換の必要が生じず、該当物品の購入を行なわなかったため。 (使用計画)翌年度使用額と併せて、主に旅費および実験消耗品購入の物品費として適正に使用する。
|