ナノシートは、特異な2次元ナノ構造に起因する高い比表面積や、面内方向の高伝導性、電極反応の高速性などを有し、最も注目される材料群である。中でも、金属や金属酸化物ナノシートはグラフェンには無い様々な機能を有する魅力的な伝導性材料になりうる。本研究では、高い導電性を発現することが期待される金属PtやAu、薄層化で理論的に導電性に変化するZnO、導電性酸化物の単層ナノシート化を狙う。 本年度は、これらの金属ナノシートの合成にむけて界面活性剤の固体結晶を利用した新規合成手法を確立した。固体状態のイオン性界面活性剤結晶は層状物質であり、規則的に二次元配列したカウンターイオンを有している。そこで、このカウンターイオンとして目的物質の前駆物質となる金属イオンや金属錯体を含む界面活性剤の固体結晶を作製した。この界面活性剤結晶の層状構造を維持しつつ、二次元配列した金属イオンや金属錯体を気体を用いて温和に反応させることで、酸化物や金属のナノシートを作製した。初期検討としてセリアナノシートの合成方法を確立し、さらに白金錯体とカチオン性界面活性剤を利用することで目的材料である金属Ptナノシートの合成にも成功した。この得られたナノシートは1 ~ 2 nmの厚みを有するとともに、極めて大きなラテラルサイズを有する点に特色がある。ボトムアップで合成されたナノシートは一般的にラテラルサイズが数μm程度と小さく、材料の特性調査を行うことが困難である場合が多いが、本手法で作製した巨大ナノシートはデバイス構築に十分なサイズを有する材料である。これらのナノシートの伝導測定に必須である電極の構築方法も確立しており、これらのナノシートが高い伝導性を有することを示唆するデータも得られつつある。
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