研究課題/領域番号 |
19K15659
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
末松 昂一 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (90637555)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガス吸着 / ナノロッド / 露出結晶面 |
研究実績の概要 |
半導体ガスセンサの材料設計指針として酸化物粒子の露出結晶面に着眼し、バイオマーカーガスであるVOCガス(エタノール、アセトン、etc)の選択的検出を試みた。具体的には、(110)面を多く露出したSnO2ナノロッド、粒子間細孔径が同程度であり配向性の低いSnO2粗大粒子、さらに粒子間細孔が小さいSnO2ナノ粒子を水熱合成法により合成、電気抵抗値やセンサ感度に及ぼす露出結晶面の効果について検証した。 まず、電気抵抗値への効果について検証したところ、SnO2ナノロッドは粗大粒子やナノ粒子に比べて電気抵抗値が低かった。これは、ロッド形状により、粒子間界面が少ないことに加えて、表面エネルギーの低い(110)面には酸素の負電荷吸着が進まないためと考えられる。従って(110)面のコンタクトでは、粒子表面の電気抵抗値が低く、その結果とした素子全体の電気抵抗値が低い値を示したと考えられる。 センサ応答特性評価として、VOCガスの1つであるエタノールに対するセンサ感度を評価した結果、150oC以下において、エタノール感度に及ぼす露出結晶面の効果が確認された。またエタノール分子は170oC以下でSnO2粒子表面に吸着することが実験的に確認されており、その吸着エネルギーは(110)面で大きくなることがDFT計算より確認された。このことから、150oC以下の温度域では、(110)面の露出によるガス吸着が、高感度化をもたらした明らかにした。そこでSnO2ナノロッドによるアセトン選択性を評価した結果、SnO2ナノロッドはガス吸着機能を強く反映する低作動温度(100oC)で、高いアセトン選択性を示した。これは露出結晶面によるガス分子の吸着特性の違いを利用したものであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
配向性の高いSnO2ナノロッドのガス吸着能を利用することで、VOCガスに対する高いセンサ感度やアセトン選択性を示した。露出結晶面によるガス吸着エネルギーの違いはDFT計算により確認できており、今後、実験的検証と併せて進める計画である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の基本的な方針として、露出結晶面によるガス吸着特性の違いを利用し、ガス選択性の高いガスセンサを実現する計画である。具体的には、ワンチップでガス濃縮・検出が可能なパルス駆動型ガスセンサによるガス検出を検討している。さらに露出結晶面によるガス吸着エネルギーの計算や実験的なガス吸着能の差異を検討予定である。 これらの成果を基に、VOCガスを選択的に検出可能な高性能半導体ガスセンサを開発するとともに、その材料設計指針を構築する計画である。
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