研究課題/領域番号 |
19K15660
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
宮川 雅矢 中央大学, 理工学部, 助教 (80758350)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 銅ナノ粒子 / サポナイト / ナノシート / メチルビオロゲン / 光誘起電子移動 / 凝集 |
研究実績の概要 |
金属ナノ粒子はその表面が保護剤で覆われることによって触媒活性が低下してしまうため,保護剤フリーかつモルフォロジーが制御されたナノ粒子の使用が望まれているが,そのような合成は容易ではなかった.これに対して申請者はすでに,層状粘土鉱物を剥離して得られる厚さ1 nm程度のナノシートを担体とすると,粒径が制御された銅ナノ粒子を合成できることを見出している.また,このナノシートは吸着特性を有するため,集合体内を反応場とした特異的な反応を期待できる.そこで,ナノシートを反応場,銅ナノ粒子を電子ドナーとして,この複合体にメチルビオロゲンを電子アクセプターとして,銅ナノ粒子からの光誘起電子移動反応で複合体の活性を評価し,ナノシートが果たす役割の解明を試みた.その結果,反応は複合体が凝集すると素早く進行することがわかった.これは,一般的なコロイド粒子では見られない挙動で,凝集はナノシートの激烈な集合に由来することがわかった.つまり,ナノシートの集合によって反応場が濃縮されていることが高効率な反応のキーとなっていることがわかった.さらに,ナノシートによって銅ナノ粒子の凝集が抑えられつつ濃縮されていることが走査型透過電子顕微鏡による観察および解析から明らかとなった.このようなナノ構造はナノシートのランダムな集合によって実現されているため,すでに知られている層状構造・ナノシートとは異なる第三の状態としての有用性が明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた手法を用いることで,光触媒活性試験の測定条件を最適化することに成功した.また,測定が難しい凝集系もファイバー分光器を用いることで解決できており,電子顕微鏡像の解析によってナノシートの濃縮の程度も定量することに成功している.
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今後の研究の推進方策 |
電子ドナーがナノシート上に存在する場合については,光誘起電子移動が効率よく進行することを突き止めたので,ナノシート上ではなく溶液中に溶解している場合について検討し,ナノシート集合体中に形成されるナノ孔の存在が活性に与える影響を解明する.また,凝集で活性が増強されるという現象を,代表的な環境汚染物質である多環芳香族炭化水素の光触媒分解反応へと展開させる.
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