研究課題/領域番号 |
19K15663
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
篠崎 健二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (10723489)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 核形成 / ナノ結晶 / 構造解析 / ゆらぎ / 太陽光波長変換材料 / アップコンバージョン / 過冷却融液 / レーザー |
研究実績の概要 |
ガラスの短距離-中距離構造と結晶化の相関を高エネルギーX線回折、XAFS、分子動力学シミュレーションなどを用いて調査した。その結果、BaF2-ZnO-B2O3系において、ガラスと析出結晶であるBaF2とで極めて類似したBa環境、特にBa-Ba距離の相関を持つガラス組成では極めて速い核形成を観測した。ガラスの核形成にガラスの第二近接以降の距離の相関が析出結晶に類似していると速い結晶化がしやすいことがわかった。また、アニオンに注目すると、分子動力学シミュレーションの結果、フッ化物イオンが偏析しやすいことが示唆された。また、BaF2系だけでなく、NaYF4やBaFClなど、それぞれカチオンやアニオンを複数含有する系においても同様の結果が得られた。本年度の研究により多数の新規透明ナノ結晶化ガラスの開発に成功した。 さらに、このガラス系では速い核形成速度のため結晶成長は相対的に抑制され、粒径は数nmに抑制され、透明なナノ結晶化ガラスが得られた。また、希土類イオンを微量添加すると核形成速度は顕著に高まることを明らかにした。組成を最適化することで、ガラスの急冷過程においてもナノ結晶化するガラスを開発した。希土類イオンを添加したガラス融液を溶融急冷することで得られた結晶化ガラスは、完全にガラス化したときよりも優れた発光特性を示した。例えば、Erを添加した場合は発光強度が50倍以上に増強された。 また、急冷過程でナノ結晶化することを利用して、融液の引き上げ過程でのガラスファイバーや微小球のナノ結晶化を試みた。Erイオンを添加したとき、980nmや1550nmのレーザー照射下で結晶化による明瞭な緑色アップコンバージョンを観測することができた。太陽光利用やレーザーデバイスなどへの展開が期待できる成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ガラス構造設計やミクロ偏析誘起により融液の冷却過程であっても高速の核形成を実現できることを明らかにした。さらに、急冷過程でもナノ結晶化するガラス組成を開発し、融液からのファイバー引き上げ過程やレーザーによる溶融急冷でもナノ結晶化を得ることに成功した。計画の主要部分は概ね達成しており、計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
微量添加した希土類イオンが核形成剤として働いたが、その理由が未解明である。さらに詳細な構造解析を行うとともに、希土類イオンの局所構造や役割を明らかにする。さらに、融液引き上げ過程で透明ナノ結晶化ファイバーや微小球の作製に成功したので、レーザーや発光デバイス作製と評価を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス蔓延に伴い、予定していた出張ができなかったため。次年度に実施する。
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