研究課題
前年度までに開発したガラス組成である、BaF2-ZnO-B2O3系、NaF-YF3-ZnO-B2O3系、BaF2-BaCl2-ZnO-B2O3系などにおいて、さらに詳細なガラス構造解析やシミュレーションによる解析と高温in situの結晶化過程の構造解析を行った。ガラスの短距離-中距離構造の結晶化過程での変化を解析するために高温での高エネルギーX線回折およびXAFSを用いて調査した。その結果、結晶化前後での構造の変化は顕著ではなく、結晶化に大きな短距離-中距離の構造変化を要さないことが示唆された。また、析出結晶の熱処理に伴う格子定数変化から、希土類イオンを多量に含有した結晶が初めに形成し、その後わずかに成長することで結晶化が進行することが示唆された。また、分子動力学シミュレーションにより得られた構造を解析することで、ガラス構造中のフッ化物の連結様態を記述する手法を開発した。これにより、BaF2-ZnO-B2O3系ではBa-F-Baのような連結が高度に発達しており、明確な偏析を形成していることを明らかにした。また、融液冷却過程でアップコンバージョン結晶化ガラス微小球を合成することに成功し、析出粒子がナノサイズであることを明らかにし、その結果、アップコンバージョン効率は数十倍に向上させることができた。冷却過程でのナノ結晶化制御が可能であることを実証した。これらの成果から、ガラスが高速で核形成するには、ガラスと結晶とが類似した短距離及び中距離構造をとること、核形成剤により核形成中心を形成させることが重要であることが示唆され、また、デバイス形成にも展開可能であることを示した。
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