研究課題/領域番号 |
19K15665
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高島 舞 北海道大学, 触媒科学研究所, 助教 (10772345)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 二酸化炭素資源化 / 光触媒 / 銀化合物 / 一酸化炭素 |
研究実績の概要 |
本研究では無水固気相型における「酸化銀サイクル」すなわち,(a)光触媒上の酸化銀に二酸化炭素を含む気体を流通させることで炭酸銀を形成させ,(b)光触媒反応により炭酸銀を酸化分解させて一酸化炭素と酸素を生成させ,さらに,(c)生じた金属銀を空気中の酸素で熱反応(あるいは光反応,光触媒反応)によって酸化銀に再生させるプロセスの有効性を実証することにより,真に実用化可能な化学プロセスとしての二酸化炭素の資源化法を開発することが目的である. 本年度は,酸化チタンなどの金属酸化物光触媒上に炭酸銀を析出させ,炭酸銀サイクルの中核である固相光触媒反応による一酸化炭素と酸素の生成(ステップb)を確認した.まず,生成する気体が微量であり検出が難しいことが予想されるため,容積をできるだけ小さくしたガラス製の反応セルの作製および光学系の選定および導入・構築を行った.しかし,ガラス製では系のリークが大きく,改良等により改善できなかったことから改めて金属製の反応セルを作製した.次に,炭酸銀は,(A)炭酸銀と光触媒の混合スラリーの乾燥,あるいは,(B)光析出法により光触媒上に金属銀を析出させたものを,酸素あるいはオゾン含有酸素気流中で焼成して酸化銀とした後,二酸化炭素と反応させるなどの方法を用いて析出させた.炭酸銀は熱に弱いため(A)のものは乾燥させた段階で酸化銀となった.次に,不活性雰囲気中において,主要設備として用いた高強度UV-LED光源(365 nm/最高1 W cm-2程度)を用いて光を照射し生成ガスの確認を行った.光照射後,炭酸銀の色が銀色から紫色に変化し,酸化銀ができたことが伺えたが,生成ガスは二酸化炭素と酸素のみであり,残留する水が酸化されている可能性が高いため,次年度では系の脱水等を試みる.また,様々な測定機器を用いての生成物の分析も行っていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,ステップbが提案したサイクルの実現可否の中核を担っているため,ステップbが実現できれば他のステップの実現および最適条件の決定はさほど難しくないと考えている.現時点では従来の報告通り二酸化炭素の生成しか確認できていないが,その対策は次の項で説明する.また,構築した反応系および生成したガスの測定系においては 2 nmol程度の一酸化炭素が生成すれば検出できるように測定条件を最適化できている.さらに,炭素の起源を特定するための炭素13でラベルした二酸化炭素を準備しており,一酸化炭素生成確認後はすぐにGC-MSを用いて確認を行える状態にある.一方,準備した数種類の高強度UV-LED光源はレンズによる集光により高強度を実現しているのだが,集光具合(光子密度分布)にばらつきがあることが判明したため,異なった光源による結果を比較できるよう,補正関数をそれぞれ求めた.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,一酸化炭素の生成確認を最優先ですすめる.炭酸銀に光照射させた場合,現時点では従来の報告通り二酸化炭素の生成しか確認できていないが,おそらく(i)炭酸銀と光触媒の接触状態が悪い,もしくは,(ii)反応系中に水が残存しているためである.対策としては,炭酸銀と光触媒の接触状態を電子顕微鏡で確認したのち,必要であれば接触を改善するための熱処理や,反応系の脱水処理などを予定している.また,作製した試料および反応前後の炭酸銀の組成と状態を,粉末X線回折,X線光電子分光法などによって確認する.なお,京都大学の吉田らのグループではチタン酸カルシウム上に光析出により担持させた金属銀を用い,水と二酸化炭素からの一酸化炭素生成に成功しており,その選択率も94.4%と高いことから,試用する光触媒を酸化チタン以外に拡大して高活性なものを探索することも視野に入れている. ステップbが確認できた後にはステップaおよびcに移り,各ステップでの銀化合物の状態は赤外吸収スペクトルにより確認等を行いながら酸化銀サイクルを確立する.
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】年度末のコロナウイルス感染拡大による学会等の中止・延期により,予定していた学会発表および参加ができなかったため. 【使用計画】特に大きな変更はないが,コロナウイルスによる学会等の中止・延期がさらに拡大・長期化されることが予想されるため,計画調書で申請した内容よりも備品費や消耗品費をより多く支出する予定でいる.
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