研究課題/領域番号 |
19K15666
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金 相侖 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20801442)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 錯体水素化物 / 超イオン伝導 / 固体電解質 / 全固体電池 |
研究実績の概要 |
錯体水素化物は金属と水素からなる籠状の錯イオンを有する材料であり、リチウムのような陽イオンが固体内を高速で伝導することから全固体二次電池の固体電解質への適用が期待される。錯体水素化物におけるイオン伝導の最大の特徴は、温度上昇に従い高温相に構造相転移し、その高温相が10-1 S cm-1以上の超リチウムイオン伝導率を示すことである。即ち、高温相における構造的・動的挙動とリチウム伝導の相関を明らかにすることで新規材料開拓の可能性が導かれる。令和元年度は、錯体水素化物の高温相の形成原理解明と高イオン伝導性を有する水素化物固体電解質材料の創出を目指して、(1-x)LiCB9H10-xLiCB11H12擬似二成分系における固溶体と構造相転移の相関および得られた試料のイオン伝導特性を調べた。以下に詳細を報告する。 ・低x値(0.1≦x0.4)、高x値において(0.7≦x0.9)、単相の(1-x)LiCB9H10-xLiCB11H12固溶体が得られた。 ・低x値ではLiCB9H10中の[CB9H10]-錯イオンが[CB11H12]-錯イオンに、高x値においてではLiCB11H12中の[CB11H12]-錯イオンが[CB11H12]-錯イオンに置換された相が形成された。 ・低x値のみにおいて、リチウムイオンと錯イオンが無秩序に配列した高温相が形成が確認され、母構造内の錯イオンとそれに置換される錯イオン間の相互作用により高温相の形成機構が大きく変化することが明らかとなった。また、x=0.3において液体電解質並みの超リチウムイオン伝導率が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、超イオン伝導特性を示す高温相の形成機構と物性探索に注力した。その結果、幅広い材料領域において、材料組成、固溶体の構造、高温相の形成機構、イオン伝導特性に関する知見を得ることが可能となった。特に、これまでに錯体水素化物における超イオン伝導特性(液体電解質並みの伝導特性)の報告例は皆無であったが、(1-x)LiCB9H10-xLiCB11H12で得られた超イオン伝導特性の成果により錯体水素化物イオン伝導体の研究が大いに加速化すると期待される。したがって、進捗状況は順調であると判断した。以下に進捗状況の詳細を簡潔に記す。 ・(1-x)LiCB9H10-xLiCB11H12の固溶領域と高温相の安定化領域が明らかになった。特に、低x領域において、超リチウムイオン伝導特性を示す高温相が室温で合成可能となり、10-3 Scm-1以上の伝導率が得られた。 ・二次電池材料としての利用可能性を検証するために、超リチウムイオン伝導特性を示す錯体水素化物を固体電解質に用いた全固体電池を作製し、電池特性を調べた。正極にTiS2、負極にLi金属、固体電解質に錯体水素化物を用いた全固体電池は可逆的な充放電特性を示した。以上の結果により、錯体水素化物超リチウムイオン伝導体の実用的な二次電池材料としての適用が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
令和ニ年度は、令和元年度の研究から得た知見を、1)高い電気化学特性が期待されるLiCB9H10-Li2B12H12二成分系と、2)高イオン伝導特性と高電気化学特性を兼ね備える材料の探索に向けてLiCB9H10-LiCB11H12-Li2B12H12三成分系へと拡張し、材料設計指針の確立とそれによる新規イオン伝導材料の創成を目指す。さらに全固体電池への実装を行い、固体電解質としての実用性を検討する。 ・具体的には、錯体水素化物の固溶化による結晶構造制御指針を様々な錯体水素化物へと拡張し、その高速イオン伝導相の室温安定化を目指す。評価法としては、得られた試料の構造を粉末X線・中性子回折により解析する。また電気化学インピーダンス法によりイオン伝導率を測定し、構造制御効果を確認する。合わせて化学構造をラマン・赤外分光法、中性子準弾性散乱法、核磁気共鳴法で、熱特性を示差熱天秤ー質量分析法で評価する。 ・作製したイオン伝導体を用いて全固体電池を作成し、高速充放電特性及びサイクル安定性を評価し固体電解質材料としての実用性を検討する。試料の電位窓および電気化学的安定性をサイクリックボルタモグラム、粉末X線回折、顕微ラマンにより評価する。また、主な電極材料との界面反応性をSTEMによる構造解析および薄膜試料のX線回折・インピーダンス測定によって補完する。
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