研究課題/領域番号 |
19K15667
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 勇太 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (60774081)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | X線CT / 固体Liイオン伝導体 / リチウム析出 |
研究実績の概要 |
本研究では、全固体リチウムイオン電池の固体電解質におけるリチウム析出が、どのような条件で発生するかを実験的に精密に検討し、さらに理論的に説明できるモデルを構築することを目的としている。先行研究により、リチウム析出は、1.リチウム金属/固体電解質界面の、電流密度が高い領域を起点として生じ、さらに2.析出したリチウムが粒界を引きはがし、粒界を伝って成長していくことが明らかにされている。したがって、全固体リチウムイオン電池の固体電解質におけるリチウム析出を理解するためには、上記1および2の挙動を理解する必要がある。上記2を理解するためには、固体電解質中にどのような粒界のパスが存在するか、またリチウムがどの粒界のパスを通って析出し、短絡を引き起こすかを理解することが重要であると考えられる。この点について理解を深めるためには、非破壊で、固体電解質試料内部の構造およびリチウム析出挙動をオペランドで観察することが必要となる。そのような測定を行う上で、X線CTは強力な観察手法であると言える。そこで一年目は、X線CTを用いて、固体電解質試料の観察を行った。X線CTによる固体電解質試料の観察はSPring-8のBL37XUにおいて実施した。固体電解質試料としては、X線透過率の高いLi2.2C0.8B0.2O3(LCBO)を選択した。その結果、X線CTにより数百マイクロメートル~数ミリメートル四方の広い領域の観察を行えることが明らかになった。しかしながら、LCBOはX線透過率が高いため、固体電解質内の空隙を識別することが困難であった。そのため今後は、よりX線透過率が低いLISICON系固体電解質材料や、ガーネット系固体電解質材料を対象に測定を行なっていく予定である。また短絡試験中にX線CT測定を行える測定系を開発し、リチウム析出挙動のオペランド観察を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
固体電解質中にどのような粒界のパスが存在するか、またリチウムがどの粒界のパスを通って析出し、短絡を引き起こすかを理解することを目的に、X線CTを用いて、固体電解質試料の観察を行った。測定試料としては、X線透過率の高いLi2.2C0.8B0.2O3(LCBO)を選択し、SPring-8のBL37XUにおいてX線CT測定を行なった。その結果、X線CTにより比較的大きな領域(数百マイクロメートル~数ミリメートル四方)の観察を行えることが明らかになったものの、LCBOのX線透過率が高いために固体電解質内の空隙を識別することが困難であった。そのため今後は、よりX線透過率が低いLISICON系固体電解質材料や、ガーネット系固体電解質材料を対象に測定を行なっていく予定である。これらの試料では、X線透過率の差から空隙と固体電解質の区別が可能であると考えられるが、その一方で、観察可能な領域がLCBOに比べて小さくなることが予想される。そのため、より微小な固体電解質試料を加工し、測定に供する予定である。またこれらの微小な試料を対象とした短絡試験中にX線CT測定を行える測定系を開発し、リチウム析出挙動のオペランド観察を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、固体電解質中のどのような粒界パスを通ってリチウムが析出し、短絡を引き起こすかを理解することを目的に、短絡試験中にX線CT測定を行える測定系を開発し、リチウム析出挙動のオペランド観察を行う予定である。固体電解質試料としては、LISICON系、あるいはガーネット系材料を対象とする。さらに、本測定にアコースティックエミッション測定を組み合わせることで、リチウム析出挙動をより詳細に理解する。また、電極/電解質界面形状がリチウム析出にどのような影響を与えるかを理解することを目的に、界面形状を制御した試料で測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
一年目はX線CT測定を行うための測定系の開発に注力したため、当初購入を予定していたポテンショガルバノスタット、アコースティックエミッション装置を購入しなかった。そのため、次年度使用額が生じた。二年目はこれらの装置を購入し、予定していた実験を行う計画である。
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