本研究では、全固体リチウムイオン電池の固体電解質におけるリチウム析出のメカニズムを理解することを目的とした。そのためには、リチウムが固体電解質をどのように通って析出し、短絡を引き起こすかを理解することが重要と考えた。それを目的に、X線CTを用いて、固体電解質試料(Li2.2C0.8B0.2O3およびLISICON系固体電解質材料)、および合剤電極試料の観察を行った。それにより、充放電時における、数百um~数mm四方の領域内の活物質の3次元的な分布を、空間分解能数umほどで観察できるようになった。それに加えて、X線CTにX線吸収微細構造法(XAFS)を組み合わせることで(CT-XAFS法)、電池材料の化学状態の変化を、3次元的に捉えることが可能となった。さらに2020年度は、結像型CT法を活用するとともに、ナノ秒レーザーやイオンミリングなどの微細加工技術を用いて、観察試料を加工することで、より高い空間分解能を有するX線CT測定およびCT-XAFS測定が行えるようになった。これにより、空間分解能約100 nmほどで、活物質や固体電解質、空隙などの3次元的な分布を捉え、かつ活物質の化学状態の3次元的な分布も捉えることが可能となった。このような、電池材料の空間分布および化学状態の分布を3次元的に捉えることを可能にする技術は、全固体電池のリチウム析出挙動を理解する上でも大いに役立つと考えられる。
|