研究課題/領域番号 |
19K15668
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小林 弘明 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90804427)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | リチウムイオン電池 / 正極材料 / 逆蛍石型酸化物 |
研究実績の概要 |
初年度となる本年度は、固体内の酸化物イオンが活性化される材料の選定を重点的に進めた。その結果、活性化元素としてコバルトを用いたLi6CoO4において498 mAh/gの可逆容量を示すことを見出した。焼成法で得られる正方晶のLi6CoO4の正極特性はすでに報告例があるが、可逆容量が約100 mAh/gと小さく、また酸化物イオンのレドックスを利用できていない。これは充電反応の立方晶への構造変化が非常に困難であり、副反応の分解反応が起こるためである。本研究ではLi6CoO4にメカニカルアロイング処理を行うことでカチオンサイトがディスオーダーし、結晶構造が正方晶から立方晶に変化することを見出した。これにより充放電反応の構造変化が容易に進行し、固体内酸化物イオンのレドックスを含む498 mAh/gの充放電が可能となった。 また、安定化する元素の選定も進め、酸化リチウムに酸化銅とフッ化リチウムをメカニカルアロイングにより同時に固溶した逆蛍石型酸化物を合成した。構造解析の結果、酸化リチウム中のカチオンサイトに銅が、アニオンサイトにフッ素がそれぞれ置換固溶していることが示唆された。本材料は300 mAh/gで繰り返しの充放電が可能であり、銅イオンおよび酸化物イオンのレドックスが可逆に進行することが確認された。酸化リチウムに銅のみを固溶した材料でも初回は300 mAh/gの充放電が可能であったが、繰り返しとともに可逆容量が低下した。充放電時の構造解析の結果、銅のみを固溶した材料は繰り返し充放電後にLi2CuO2に分解していることが明らかとなった。一方で、銅とフッ素を同時に固溶した材料では繰り返し充放電後の分解が抑制されていた。さらに、充放電前後の逆蛍石相の格子定数がほとんど変化しておらず、フッ素置換により逆蛍石相が安定化、分解反応が抑制され、サイクル性向上につながったと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の研究計画通り、酸化物イオンを活性化させる元素の選定により、コバルトを用いた材料において500 mAh/gに近い高容量を示した。さらに、活性化元素の銅が固溶された逆蛍石正極材料に安定化元素としてフッ素をドープした材料において、サイクル性の向上を達成でき、研究全体の目的達成にも成功した。以上を踏まえ、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
酸化物イオンのレドックスを安定化させる元素の探索を進める。初年度で明らかにしたフッ素に加え、カチオンとして亜鉛やアルミニウムなどの典型金属元素を同時に置換した材料を合成し、正極特性評価、高容量とサイクル性の両立を狙う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
第四四半期に投稿した論文の投稿料として使用するため。 次年度使用額は論文投稿料として使用する。
|