前年度の研究で、固体内の酸化物イオン活性化元素として安価なFeを用いた立方晶逆蛍石Li5FeO4において300 mAh/g以上の可逆容量を示すことを見出したが、酸化された酸素種が不安定であり低いサイクル性を示した。最終年度となる2021年度は、Li5FeO4への異種元素置換による酸化物イオン安定化効果の検証およびその安定化メカニズムを詳細に検討した。放射光X線回折、硬X線吸収分光から、Al、Si、Ge、P、S、F、Cl、Brを逆蛍石骨格内へ置換固溶させた試料の合成に成功した。これら置換固溶材料の正極特性を評価した結果、GeまたはPを置換固溶した材料においてサイクル性が向上した。特に、高電位側レドックスである酸化物イオンレドックスの容量が確認され、正極エネルギー密度が増大した。レドックス反応メカニズムを評価したところ、Feおよび酸素のレドックス反応形態、結晶相の変化挙動は無置換体とほとんど変化がなかった。置換元素の効果を調査するため、Ge置換材料においてGe K-edge XAFSを測定した結果、酸素のレドックス反応時にGeの配位状態が4配位と6配位の間で変化することが示唆された。Oのレドックス反応においてカチオンサイトは四面体4配位のLi2Oから八面体6配位のLi2O2へ変化することが示唆されており、Geの変化挙動が一致していることからGeは酸素レドックスを担う酸素原子と結合していることが予想された。以上より、レドックスを担う酸素原子と異種元素を結合させることによりアニオンレドックスのサイクル性向上が可能であることが見出された。
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