研究課題/領域番号 |
19K15672
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中山 亮 東京工業大学, 物質理工学院, 研究員 (20833974)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 全固体Li電池 / 5 V級正極 / ベイズ推定 |
研究実績の概要 |
以下に、交付申請書に記載した研究の概要を抜粋する。 「そこで本研究は、以下を達成することにより、「5 V」以上で高速充放電が可能なLi電池を創製する。1) エピタキシャル薄膜を用いた全固体電池を作製し、電池内部における反応を規定する。2) ベイズ推定などのデータ駆動科学の方法論を導入したインピーダンス解析を行い、5 V以上での律速過程の特定を行う。3) 律速過程をピンポイントに狙う改善手法(緩衝層の導入、固体電解質の探索)を試みることで、(中略) 5 V以上における充放電の超高速化とその実用に向けた改善指針を確立することを目指す。」 本年度では、①LCMOエピタキシャル薄膜を用いたモデル電池の作製・評価、②ベイズ推定に基づくインピーダンススペクトル解析手法の確立を目的として研究を行った。 まず、①に関して、(100)配向LCMOエピタキシャル薄膜を用いた薄膜モデル電池の作製に成功した。続いて、電気化学インピーダンス測定を行ったところ、5 V以上の高電位において界面抵抗の急激な増大を観測した。興味深いことに、充放電過程において界面抵抗はヒステリシスを示し、9.5時間後には4.0 Vにおける界面抵抗値が元の値に回復した。このような高電位における界面抵抗の増大の可逆性及び時間依存性は、高電位における界面抵抗の起源として界面における可逆的な構造変化を示す重要な結果だといえる。 次に、②に関しては、より正確なインピーダンススペクトル解析に向けて、ベイズ推定を用いた解析方法を開発した。本手法を用いて、RC並列回路を元に人工的に作り出したインピーダンスデータに対しては95 %の正答率で等価回路モデルの選択が可能であることが分かった。今後は実際の電池素子の解析を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に、交付申請書に記載した研究の概要を抜粋する。 「そこで本研究は、以下を達成することにより、「5 V」以上で高速充放電が可能なLi電池を創製する。1) エピタキシャル薄膜を用いた全固体電池を作製し、電池内部における反応を規定する。2) ベイズ推定などのデータ駆動科学の方法論を導入したインピーダンス解析を行い、5 V以上での律速過程の特定を行う。3) 律速過程をピンポイントに狙う改善手法(緩衝層の導入、固体電解質の探索)を試みることで、(中略) 5 V以上における充放電の超高速化とその実用に向けた改善指針を確立することを目指す。」 上記[研究実績の概要]欄で記載した通り、本年度では、①(100)配向LCMOエピタキシャル薄膜を用いた薄膜モデル電池の作製と評価を行った。また、②ベイズ推定を用いたインピーダンススペクトル解析手法を開発した。 重要な進捗として、5 V以降の高電位に晒した後の界面抵抗の増大及び時間依存性から、界面における可逆的な構造変化が高電位における界面抵抗増大の原因となっていることが示唆されたことが挙げられる。これは当初の計画では予想していなかった成果だが、5 V以上における界面抵抗の低減指針を確立するための貴重な知見を得ることができた。 以上の理由より、これまでの研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では①5 V級正極材料を用いた薄膜モデル電池の作製・評価と②ベイズ推定に基づいたインピーダンススペクトル解析の方法を開発した。 交付申請書に記載した研究計画に基づき、次年度以降では、高電位におけるインピーダンススペクトルの精緻な解析を目指すために、本年度開発したインピーダンススペクトル解析手法の適用を行う。また、緩衝層の導入による界面抵抗の低減を試みる。 当初の研究計画には記載していなかったが、上記に加えて、本年度見出した界面抵抗の時間依存性について、緩和時間の温度依存性の測定なども検討している。こういった多角的なアプローチを通じて、5 V以上における充放電の超高速化とその実用に向けた改善指針を確立することを目指す。
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