研究課題/領域番号 |
19K15677
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
伊藤 博光 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00780579)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 柔軟性MOFs / 分子貯蔵 / 分離 / サーマルマネジメント / 熱吸収 / 吸着 |
研究実績の概要 |
本年度は申請書に記載の通り,①柔軟性MOFsの熱吸収機構の解明,②吸着速度・吸着量温度依存性の評価,③自己熱吸収するMOFsの合成・探索を試みた。 項目①では,柔軟性MOFs:ZIF-8において,吸着に伴う発熱量が粒子径の減少に伴い低下することが微分吸着熱測定より明らかになった。VOCsのモデルとして,極性分子のエタノールおよび非極性分子のn-ヘキサンを用いて行った熱量測定の両者で,小さな粒子径のZIF-8が低い吸着熱を示す。これは粒子表面の結晶格子において隣接する格子が存在しないため,バルク結晶格子に比べ貯蔵する分子を安定する能力が低いことに由来すると考えられる。この予測に基づき算出した表面結晶相の厚みは,シミュレーションによって予測された結果と概ね一致し,表面結晶相が低い吸着熱を示す事を示唆している。またこの効果は,表面結晶格子を構成する2-メチルイミダゾールにも働き,バルク結晶と異なる分子運動性を示す事が予想され,表面結晶格子を形成する2-メチルイミダゾールの運動性がバルク結晶格子の場合と異なることを示唆している。 項目②では,圧力フィードバック法の装置製作を行った。装置はおおむね完成した。 項目③では,地球温暖化など多様な目的で分離が望まれるCO2の分離を可能とする柔軟性MOFs:ZIF-7の吸着熱特性評価およびリガンドを一部ZIF-8の2-メチルイミダゾールに置換した新たなMOFs:ZIF-7/8の合成を試みた。ZIF-8では,急激にCO2を貯蔵する圧力範囲で,吸着熱が低下することを確認し,MOFsの構造変化により吸着熱が吸収されることが示唆された。またZIF-7/8では,ZIF-7同様の圧力範囲でZIF-7に比べさらに急激なCO2の吸着を確認した。現時点で熱評価は実施していないが,異種のリガンド分子を導入したことにより柔軟性が向上した可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績において記載した実施項目において,①では想定していたMOFsの熱吸収機構の解明が完了した。しかしMOFsの種類によって熱の吸収機構は異なるため,継続的に実施する必要がある。また機構解明において,新たな評価方法が必要となったため,その検討に計画以上に時間を要した。①の結果を受け,②において実施する予定が遅れており装置の完成が計画より遅れている。③では,想定の範囲内でMOFsの探索および合成を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年5月末日を持って,科学研究費補助金事業を実施できない機関に転出したため,研究を推進することが不可能になった。
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