研究課題/領域番号 |
19K15679
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中本 康介 九州大学, 先導物質化学研究所, 学術研究員 (10804271)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 水溶液 / カリウム / ナトリウム / プルシアンブルー / MOF / ナフタレンジイミド / 水和半径 |
研究実績の概要 |
水系カリウムイオン電池用電解液候補として高濃度に溶解可能なKOTf(カリウムトリフレート)を用い、正極にボトルネックサイズが5 Å程度のプルシアンブルー型カリウムニッケルヘキサシアノフェレートK2Ni[Fe(CN)6]、負極にボトルネックサイズが16 Å程度のジメチルピラゾリルナフタレンテトラカルボキシジイミド亜鉛MOFである[Zn(dmpyr)2NDI]n-MOFとした水系カリウムイオン電池は平均放電電圧1.2 V、約60 mAh/gの可逆容量を示した。 ナトリウムイオンよりも表面電荷密度の小さいカリウムイオンは水和半径が小さく、同アニオン同質量モル濃度において、水系カリウムイオン電池電解液は水系ナトリウム電解液よりもイオン伝導度が高いため、ジメチルピラゾリルナフタレンテトラカルボキシジイミド亜鉛[Zn(dmpyr)2NDI]n-MOF負極ハーフセルの水系カリウムイオン電池負極は水系ナトリウムイオン電池負極よりもレート特性が良好であった。 しかしながら、水分子とカリウムイオンの相互作用が小さいため自由水が多く、水の酸化還元が容易に起こるため電位窓は小さく、水系カリウムイオン電池のサイクル特性は水系ナトリウムイオン電池に劣ることが分かった。 今後は、高電位正極・低電位小分子負極・高濃度電解液を用いる事によって、水系カリウムイオン電池の高エネルギー密度化を目指す。また、留め金として機能する亜鉛を、他の金属イオンに変えたMOFとの特性比較を行う事で、水系電池用負極として可逆的に機能しうる強固な構造探索を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化還元中心のナフタレンジイミド/ピロメリット酸ジイミド、亜鉛MOF化する際のリンカー部としてピラゾール環に2つのメチル基の有無に関して検討を行ったところ、既報ジメチルピラゾリルナフタレンジイミド亜鉛MOFである[Zn(dmpyr)2NDI]n-MOFのみ可逆的に負極材料として作動した。
|
今後の研究の推進方策 |
酸化還元中心のナフタレンジイミドは分子量が大きく、水の電位窓の下限付近で反応を起こすが、下限までは0.4 Vほどのマージンがある。今後、水系カリウムイオン電池の更なる高エネルギー密度化を達成するため、小分子・低電位酸化還元中心を持つ有機活物質を用いたMOF材料設計を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の旅費は類似他の予算執行によるものが多く比較的少額であった。2020年度の環太平洋学会での予算執行を想定している。
|