研究実績の概要 |
高機能な色素増感太陽電池のゲル電解液の開発を目指し、ゲル中でのイオン運動性の評価を検討した。これまで検討から、ゲル電解液系中の三ヨウ化物イオンの運動性がゲルの組成やイオン種によって変化することが確認された。 これまで合成されたポリメチルメタクリレート(PMMA)と有機修飾粘土を電解液に添加することでゲル化を行ってきたが、2022年度はPMMAを有機修飾粘土添加時に合成・複合化したものを使用した。2021年度以前において、カウンターカチオンとしてはリチウムイオン(Li+)と1, 2-dimethyl-3-propylimidazorium (PIm)で検討を行い、その結果イミダゾリウム誘導体であるPImにおいては粘土添加時に三ヨウ化物イオンの運動性が低下したが、Li+は粘土添加時に三ヨウ化物イオンの運動性は向上した。PMMAの添加方法を変更した2022年度においても同様にカウンターイオンがLi+の場合のみ三ヨウ化物イオンの運動性が向上した。また、Li+とPImを共存させた系でも検討を行ったところ、Li+ : PIm = 8 : 2では粘土添加時に三ヨウ化物イオンの運動性は向上したが、Li+ : PIm = 2 : 8では運動性が低下した。この結果から、用いたカウンターカチオンと三ヨウ化物イオンとの相互作用の大きさに差がない、もしくはカチオン-粘土鉱物間の相互作用の方が相対的に強い可能性が考えられる。 研究期間全体を通して、三ヨウ化物イオンのカウンターカチオンのイオン種によって粘土鉱物添加時の三ヨウ化物イオンの運動性が変化することが観測された。このことから、粘土鉱物添加による系の粘性増加やPMMAの状態といったような共通した因子や三ヨウ化物イオンとカチオン間の相互作用ではなく、カチオンと粘土鉱物間の相互作用がより支配的な因子である可能性が示された。
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