水素+二酸化炭素混合雰囲気下における、水素吸蔵合金粉末のボールミリングによるメタン生成挙動について引き続き調査を行った。令和2年度より、振動ボールミルと高圧ジーベルツ装置、ガスクロマトグラフィーを組み合わせることにより、メカノケミカルプロセス中に発生するガスの圧力を測定しながら、ガス成分のその場定性が可能となるよう装置の改造を行った。 本装置を用いて、LaNi5粉末とLaNi4.6Al0.4合金粉末について調査した結果、二酸化炭素が消費されるよりも早く水素量が減少する挙動がメタン生成に先立つことが明らかとなった。すなわち、合金表面での触媒反応によりメタンが生成するよりも先に、水素の一部が合金内部に吸収されることがわかった。令和3年度より質量分析計を接続し、水素のみの雰囲気で同様に実験を行った結果においても、反応初期に水素圧力の減少が認められたことから、試料へ水素が固溶していることが確認された。この挙動は、LaNi5よりもLaNi4.6Al0.4の場合の方が速やかであり、また、メタン生成の開始もLaNi4.6Al0.4の場合の方が速やかであった。これは、水素固溶量がLaNi4.6Al0.4の方が多いことに起因していると考えられる。すなわち、固溶している原子状水素が気相/固相界面の反応場へ供給されることによりメタン生成の開始が促進されていることを示唆している。以前アトムプローブによる分析で明らかとなったように、メタン生成が生じるとともに、合金相はNiと主にLa酸化物からなる微細な複合組織に相分離する。この相分離組織が更にボールミリングされることでメタン生成が継続し、同時に水分子が生成されることも質量分析により明らかとなった。また、生成した水は、Laの一部を水酸化することがXPSを用いた表面分析により確認された。
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