これまでの研究でSOFCアノードへの助触媒の添加効果が有用であることが分かってきたが研究申請者オリジナルの助触媒であるBIZZO以外の助触媒の添加効果は得られておらず、助触媒添加によるアノード層内の活性サイトの有効なあり方を今回提案することを目標とした。その手法として用いたのは欠陥構造シミュレーション(ソースコード:gulp)を用いて、SOFCアノード層内の材料であるZrO2表面へ会合欠陥クラスターを配置した場合の結合エネルギーを計算した。助触媒添加による活性サイトはZrO2表面に形成されるとこれまでの研究で明らかになっていることから、ZrO2の結晶構造である蛍石型構造に着目した。活性サイトとして振る舞うにはZrO2表面に酸素欠陥が導入されることが必須であることから蛍石関連構造の希土類C型構造の酸素欠陥位置を見本として、酸素欠陥の生成位置を決めて計算シミュレーションを行った。その結果、これまでは活性サイトとして考えられる欠陥会合クラスター数が2ケまでしか計算が収束しなかったが、希土類C型構造を見本としたクラスターモデルでは今回の計算で最大の4ケまで増やして計算を収束させることができ、SOFCのアノード反応を活性化させる活性サイトの有効な在り方に迫ることができた。今後はこのモデルを基に、いかにZrO2表面に設計できるかで更なる性能の向上が見込めると考えられる。また、BIZZOに類似したBIMZOという助触媒を合成し、アノード層に添加し発電性能を評価したところ、BIZZOと同様に発電性能が向上した。今後はこの結果を踏まえて、SOFCの性能向上と長期安定性のトレードオフ解消に資する研究につなげたいと考える。 以上の研究結果をまとめ2020年度に開催された日本MRS年次大会で学会発表を行い「奨励賞」を受賞することができた。
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