研究課題/領域番号 |
19K15688
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
内田 悟史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (40725420)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電解液中のイオン輸送特性の解析 / 電解液の物性評価 / 電解液の構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、混合溶媒を用いたLIB用電解液中におけるanionの役割を電気化学的、分光学的に解析し、科学的理解の伴った新規電解液の開発に繋げることであり、研究課題は[1]電解液の伝導度、粘度の実測およびそれらに対するanionの影響の解明、[2]Li+,anion,溶媒の拡散係数の実測ならびに、Li+の拡散挙動および電解液構造とanion の化学構造の関係の解明、[3]電解液構造と電極反応速度の関係の解明である。 [1]および[2]ではアニオンの異なる2種類のリチウム塩それぞれに対し、溶媒組成が異なる7種(計14種)の電解液を調製し、2019年度に密度、伝導度、粘度、拡散係数、Raman散乱のすべての測定を完了させた。まとまった多量のデータが得られており、これらのデータを公開するだけでも十分な価値のあるものとなっている。実験から得られた情報に加え、計算科学を含む先行研究の結果を用いることで、電解液中のcation-anion間、cation-solvent間の配位構造を解析し、さらにそれらが伝導や拡散現象に与える影響を詳細に説明できる段階に至った。結果は論文として既にまとめており、2020年度第一四半期に投稿予定である。 [3]については、[1][2]で調整した電解液中での電極反応に関する交流インピーダンス測定を中心に行う。解析を単純化するために単一の電極反応のみを測定できるシステム(セル)が必要であり、セルの設計、試作、妥当性の評価を2019年度に完了させた。2020年度より実際の測定を行い、電極反応速度と[1][2]で解析した電解液の構造との関係を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画では[1]電解液の伝導度、粘度の実測およびそれらに対するanionの影響の解明は2019年度、[2]Li+,anion,溶媒の拡散係数の実測ならびに、Li+の拡散挙動および電解液構造とanion の化学構造の関係の解明は2019年度下半期から2020年度上半期にかけて行う予定となっていたが、どちらの課題も2019年度内に完了することができ、すでに成果発表の準備に入っている。また、[3]電解液構造と電極反応速度の関係の解明については2020年度開始予定であったが、測定系の設計、試作、妥当性の評価を前倒しで2019年度内に完了させることができた。2020年5月現在、COVID-19の影響で研究進捗速度が極端に低下してはいるものの、2019年度の取り組みで当初の予定を大幅に上回る進展があったため、今後も順調に研究を進めることができる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
予定を上回る進捗により、2020年度の課題は[3]電解液構造と電極反応速度の関係の解明における電気化学測定の実測および解析のみとなった。電極反応速度の解析は条件に非常に敏感であることが予想されるため、測定条件の見直しや実施回数を増加させる等、当初の予定よりも多くの時間を費やす予定である。また、解析方法についても、より詳細かつ深い理解が得られるように十分に時間をかけて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
伝導度測定を行うための周波数応答アナライザ付きポテンショガルバノスタットボードを購入予定であったが、申請者が所属する機関に要件を満たすものが存在し、それを利用できることになったため、購入を見送った。 一方で、粘度計に関してはすでに所有しているものを利用する予定であったが、測定精度を向上させるために新たに購入した。 購入を見送った周波数応答アナライザ付きポテンショガルバノスタットボードと購入した粘度計の差額により、次年度使用額が生じた。 次年度使用額を利用し、電極反応速度評価用セルの購入数を増やして、実験速度や回数を当初の予定よりも増やす予定である。
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