研究課題
本研究では副作用の無い抗がん治療法へ向けた新規コンセプト提唱を目指して、がん細胞内に豊富に存在する鉄イオンを利用した細胞内有機合成に取り組んだ。抗がん剤のモデル化合物としてはSN-38を採用し、その前駆体(無活性)を細胞に与え細胞内にて分子骨格を形成させて活性を発現させることを目指した。SN-38は高い抗がん活性を有する化合物であり、そのプロドラッグである塩酸イリノテカンが乳がんや大腸がん等の様々な種類の固形がんの治療に幅広く利用されている。SN-38前駆体の合成はキノリン部分とラクタム部分をそれぞれ合成し、カップリング反応によるC環の構築と続く保護基の脱保護反応によりSN-38前駆体を得ることを計画した。SN-38のキノリン部分(AB環)は光フリース反応を鍵反応として駆使することで、既存の合成法よりも短工程にて骨格を形成する手法を確立した。また、SN-38のラクタム部分(DE環)も別途調製し、AB環とDE環を連結したABDE環を有する化合物の合成に成功した。また、SN-38のC環部分の構築を目指して、BD環モデル化合物を合成し、実際にパラジウム触媒を用いてC環を構築する条件を見出し、同一の反応を鉄触媒にて実施する検討に進んだ。関連した研究として、N-オキシドの還元反応に鉄触媒を利用する検討も同時進行で行った。その結果、2価の鉄イオンによりN-オキシドから対応するアミンを得ることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していたSN-38のDE環構築が予想に反して反応が進行しなかったが、種々条件検討を重ねることで解決できた。
細胞内の鉄イオンを用いたSN-38のC環構築を目指したモデル検討として、BD環を用いて最適な反応条件を模索する。その後、実際にABDE環を有するSN-38前駆体による細胞内SN-38合成と薬効発現の検討を行う。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
Sensors and Actuators B: Chemical
巻: 333 ページ: 129548~129548
10.1016/j.snb.2021.129548
Chemistry Letters
巻: 49 ページ: 222~224
10.1246/cl.190876
Nanoscale
巻: 12 ページ: 16710~16715
10.1039/d0nr04910g
Molecular Crystals and Liquid Crystals
巻: 706 ページ: 116~121
10.1080/15421406.2020.1743446
巻: 706 ページ: 79~85
10.1080/15421406.2020.1743441
巻: 706 ページ: 122~128
10.1080/15421406.2020.1743447
The Bulletin of the Society of Nano Science and Technology(ナノ学会会報)
巻: 19 ページ: 15~20
細胞
巻: 52 ページ: 47~51