研究実績の概要 |
本研究では, 申請者が開発した緑色蛍光乳酸センサーeLACCO1を改変することで赤色蛍光乳酸センサーR-eLACCO1を開発することを目的とした. eLACCO1は乳酸結合タンパク質及び緑色蛍光タンパク質(λex/em 488/510 nm)からなり, 乳酸が乳酸結合タンパク質に結合することで緑色蛍光タンパク質の蛍光強度が上昇する. はじめにeLACCO1中の緑色蛍光タンパク質を赤色蛍光タンパク質に置換することで蛍光波長を緑色から赤色(λex/em 560/590 nm)に置換し, 赤色蛍光乳酸センサープロトタイプR-eLACCO0.1を開発した. この際, 様々な赤色蛍光タンパク質を検証し, 最も感度が高かった赤色蛍光タンパク質を選抜した. 次にR-eLACCO0.1の乳酸に対する感度は非常に低かったため, directed protein evolutionによって感度を繰り返し向上させた. 乳酸結合タンパク質中の乳酸結合ポケット部分に変異を加えて乳酸親和性を最適化し, 高親和性センサーR-eLACCO1及び低親和性センサーR-eLACCO1.1を開発した. 細胞膜シグナルを付加した両センサーをHeLa細胞(ヒト由来培養細胞)に発現させたところ, 細胞膜上への発現が確認され, 観察倍地中への乳酸添加によってセンサーの蛍光上昇が確認された. 以上の結果から, 高親和性赤色蛍光乳酸センサーR-eLACCO1及び低親和性赤色蛍光乳酸センサーR-eLACCO1.1が生細胞で機能することが実証された. 本成果は, 生体透過性が緑色光より高い赤色光で生体内での乳酸観察を可能にし, 生体内での乳酸動態を明らかにすることが可能になりうる点で極めて科学的意義が高い.
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