研究課題/領域番号 |
19K15692
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森本 淳平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70754935)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ペプチド / ペプトイド / N置換ペプチド / タンパク質リガンド / 立体構造解析 / 固相合成法 / フォルダマー / 分子認識 |
研究実績の概要 |
本研究では、生体分子とくにタンパク質の精密認識を実現する人工オリゴマー分子の創出を目標に研究を行っている。本年度は、この目標達成に向けて、多様な3次元構造を形成するペプトイドを実現するために、様々な主鎖骨格からなるペプトイドの研究を行った。 まず、基礎課題として設定した「主鎖改変型ペプトイドによる水中での多様な立体構造形成の実現」へ向けて、ヘテロカイラルな主鎖骨格からなるオリゴマーについて、量子化学計算に基づく安定立体配座の推定と分子動力学計算による3次元構造の動的挙動の評価を行った。また、さらなる主鎖骨格の拡張を目指して、主鎖がβアミノ酸で構成されるペプトイドの合成と構造解析を行った。特に、β位に置換基を有するβアミノ酸を主鎖骨格とするペプトイドについて、β位の置換基の構造とオリゴマーの3次元構造の相関について研究した。その結果、ループ型のユニークな3次元構造を形成するペプトイドの創出に成功した。 次に、応用課題として設定した「主鎖改変型ペプトイドを基盤としたタンパク質認識分子の設計・合成・評価」の第一歩として、MDM2を標的タンパク質とするペプトイド型リガンドの設計・合成・評価を行った。主鎖骨格としては上述したヘテロカイラルのものを利用した。その結果、MDM2に結合するリガンドが得られたが、その結合能は弱く、今後、より強く結合するリガンドの取得に向けて設計手法を改良していく必要があると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であった、多様な立体構造を形成するペプトイドの実現へ向けて、まず、ヘテロカイラルな主鎖骨格からなるオリゴマーや主鎖がβアミノ酸で構成されるオリゴマーについて、構造解析を行い、各々のオリゴマーの安定立体配座やその動的挙動について明らかにした。一方で、βアミノ酸を導入したペプトイドについては、主鎖の残り2つの二面角θとψが制限できていないこと、また、構造制御のためにナフチル基のような脂溶性の高い構造を導入する必要があるため水溶性が著しく低くなってしまうこと、の2つの課題が残されており、今後これらの課題を克服するような新たな設計が求められる。 また、もう1つの目標である優れた生体分子認識能を発揮するペプトイドの創出についても、MDM2をモデル標的タンパク質として、弱いながらも実際にタンパク質に結合するリガンドを取得することに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
多様な主鎖骨格からなるペプトイドについて、オリゴマーを合成して構造解析を行うことを通じて、より精密に水中での3次元構造を設計できる分子骨格の実現を目指していく。特に、βアミノ酸を主鎖骨格とするペプトイドについては、α位とβ位が環状化されたβアミノ酸などを用いることで、今年度の設計で課題として挙げられた全ての二面角の制御と水溶性の向上の2つを同時に達成することをねらう。また、これらの様々な主鎖骨格からなるペプトイドの構造解析から得られた知見に基づき、優れた生体分子認識能を実現するペプトイドを設計・合成する。合成したペプトイドは、これまで行ってきたMDM2を標的タンパク質とした蛍光偏光による結合能の定量的分析を通じて、その分子認識能の評価を行っていく。
|