研究課題
本研究では、生体分子の精密認識を実現する人工オリゴマー分子の創出を目標に研究を行っている。本年度は、この目標達成に向けて、まず、様々な主鎖骨格からなるペプトイドの研究を行い、多様な三次元構造の実現を目指した。まず、基礎課題として設定した「主鎖改変型ペプトイドによる水中での多様な立体構造形成の実現」へ向けて、ヘテロカイラルな主鎖骨格からなるオリゴマーについて、水中での安定配座を、核磁気共鳴法による測定に基づき評価した。核オーバーハウザー効果(NOE)の測定に基づくプロトン間の近接効果などの情報から水中での安定立体配座を求めたところ、量子化学計算で予想された安定立体配座とよく一致する立体配座を形成していることが示唆された。現在、このペプトイドについて、結晶構造解析も含め、より精密な構造の解明に向けて研究を進めている。また、さらに多様な3次元構造を実現するために、主鎖がβアミノ酸で構成されるペプトイドについての研究も進めた。これまでに、主鎖β位にナフチル基を導入することで3次元構造の安定化を試みてきたが、完全に3次元構造を制御するには至っていなかった。そこで、主鎖に環状構造を含むβアミノ酸をモノマーとして用いることで主鎖二面角回転の制限を試みたところ、剛直に特定のかたちを形成するペプトイドを創出することに成功した。 次に、応用課題として設定した「主鎖改変型ペプトイドを基盤としたタンパク質認識分子の設計・合成・評価」に関して、まず、前年度に取得したMDM2リガンドの改良を行った。その結果、元のペプトイドより10倍程度強い結合のものを得ることに成功した。さらに、ペプトイドを用いたリガンド設計の汎用性を検証するために、MDM2以外のタンパク質に対しても同様にリガンドを設計した。その結果、結合親和性が低いながらBCL-XLに結合するリガンドを取得することに成功した。
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Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan
巻: 78 ページ: 1076-1084
10.5059/yukigoseikyokaishi.78.1076