研究課題/領域番号 |
19K15696
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三木 卓幸 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (20823991)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Phage Display / ペプチドリガンド / 化学修飾 / 膜蛋白質 / 金属錯体 |
研究実績の概要 |
中分子医薬品は、標的特異性が高くまた合成可能であることから、次世代の医薬品として注目を浴びる。そのリード配列を探索する技術としてファージディスプレイ法が挙げられる。しかし、この手法は、創薬の標的となるGPCRなどの膜蛋白質には適用が困難である。その理由として、膜蛋白質が精製困難であることや、精製せずに細胞表層の標的膜蛋白質に対してスクリーニングする手法が確立されていないこと、膜蛋白質の発現量が少ないことが挙げられる。 本課題において、膜蛋白質に対するスクリーニングを可能とする”Tag-assisted Phage Display”法の開発を確立する。これは、ファージに金属錯体を修飾することで、Hisタグを融合した標的膜蛋白質に対して選択性をもたせる戦略である。まず、ファージに修飾する金属錯体の有機合成を行った。また、これをファージに化学修飾する反応条件を確立した。さらに、His-tagを融合したhDM2蛋白質をモデルとして、in vitroでHisタグ-金属錯体の相互作用によるファージ結合量の向上を評価した。その結果、hDM2に対して10倍程度結合するファージの量が増加し、回収率が増加することが判明した。これは、発現量の少ない膜蛋白質を標的にした場合、非常に有効的である。 また、修飾ファージディスプレイの知見を得るために、化学修飾によってファージ上のペプチドを環化し、Galectin-3蛋白質に対するペプチドリガンドのスクリーニングを実施した。スクリーニングの結果Galection-3に選択的に結合する環状ペプチドが探索され論文に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、5段階で遂行される。1ステップ目はファージに修飾する金属錯体誘導体の合成、2ステップ目はファージの化学修飾反応の確立、3ステップ目は修飾による親和性向上の評価・検討、4ステップ目は膜蛋白質対するスクリーニング、5ステップ目はスクリーニングされたペプチドの同定・評価、である。現在までに、3ステップ目まで達成しており概ね順調に進んでいる。特に、1ステップ目において金属錯体誘導体の合成スキームが確立されているため、様々な誘導体を容易に作成できる状態となった。これにより、4ステップ目以降で望みの結果が得られなかった場合でも、速やかに錯体構造を変えて検討ができる環境が整った。更に、2ステップ目のファージの修飾反応では、ファージの活性を維持したまま定量的に反応を進行する必要があるが、幸いなことにこれら課題をクリアした反応条件を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの計画で概ね順調に研究が進展しているので、研究計画に大幅な変更なく遂行する。具体的には、ファージに対し定量的に金属錯体を修飾できたため、細胞表層の膜蛋白質に対してスクリーニング(上記のステップ4)を実施する。そのために、His-tagを融合した膜蛋白質を細胞に発現させ、これに金属錯体修飾ファージを添加してセレクションを行う。また、セレクションで回収されたファージのDNA配列を読みヒットペプチドを得る。蛍光修飾したヒットペプチドを合成し、実際に細胞表層で膜蛋白質に対してペプチド が結合能を有するか検討を行う(上記のステップ5)。 ステップ4以降で、最適なペプチドがヒットしなかった場合、ファージに修飾する金属錯体の種類や数を変更することで、標的への親和性を向上あるいは減弱させて、目的達成にむけて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予定通りに研究費を消化した(直接経費:1,407,643円)。しかし、残額(392,357円)が発生したので、翌年度に繰り越しを行う。その理由としては、消耗品の購入(膜蛋白質遺伝子の購入、次世代シーケンシング用の材料の購入)を延期したためである。これらは翌年度に購入する。繰越を含む翌年度予算(直接経費 総額:1,892,357円)は、消耗品費(プラスチック製品・細胞培養消耗品・遺伝子工学実験関連の消耗品・有機合成の試薬や溶媒など:約155万円)、共通機器利用料(約20万円)、旅費(学会参加費等:約15万円)に使用する。
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