中分子医薬品は、小分子医薬品の様に合成可能であり組織浸透性が高い長点をもちつつ、抗体医薬の様に高い標的特異性を有することから、注目を浴びる。中分子医薬品の開発において標的と結合するリードペプチドの探索が重要である。代表的なリードペプチドの探索法としてファージディスプレイ法があげられる。数千万種類のペプチドを提示したファージライブラリを標的分子と混合し、結合したファージのみを回収することで、標的分子と結合するペプチドが同定できる。ファージディスプレイ法は、実績のある優れた方法であるが、単離精製の困難な膜蛋白質に適用が困難であることや、ファージの感染バイアスが強い等の課題が多く残された。 そこで筆者らは、ファージディスプレイ法にHis-tagとNi錯体間の相互作用を組み込んだ、"Tag-assisted phage display法"を考案した。これは、標的蛋白質にHis-tagを融合し、ファージライブラリに金属錯体を融合し、これらを混合してリードペプチド配列を探索する方法である。標的蛋白質に親和性を有するペプチドを提示したファージは、ペプチド-標的蛋白質間の相互作用に加えて、Ni錯体とHis-tag間の相互作用が協奏的に作用することで強固に結合できる。そのため、強い洗浄条件にも耐え、親和性の高いファージのみを選択的に高回収率で得られると考えた。 筆者は、3種類の異なる金属錯体を用いて、His-tag融合hDM2蛋白質を標的にして、Tag-assisted phase display法の特徴を調べた。1-3ラウンドのセレクション後に得られたファージ遺伝子を次世代シーケンスを用いた配列解析を行った。その結果、Ni-IDA及びNi-NTA錯体を修飾した場合、優位にhDM2と結合するファージが強く濃縮された。以上から、本手法によって、著しくペプチド探索において優れることが示された。
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