研究課題/領域番号 |
19K15699
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
稲葉 央 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (00778011)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 微小管 / チューブリン / ペプチド / タンパク質 / Tau / 生体材料 / ナノマテリアル / アクティブマター |
研究実績の概要 |
本研究では、微小管内部に結合するTau由来ペプチドTPを用いて、微小管内部にタンパク質や金ナノ粒子の導入を行い、構造や物性が変化した微小管の構築を試みる。当該年度は実施計画に従い、緑色蛍光タンパク質(GFP)の内包を重点的に推進した。 GFPの11番目のβストランドのGFP 11とTPを連結したTP-GFP 11を合成し、GFPの1-10番目のβストランドのGFP 1-10と再構成することで、TPが修飾されたTP-GFPを合成した。TP-GFPをチューブリンと相互作用させた後に微小管を形成することで、TP-GFPの微小管への内包を試みた。TP-GFPの微小管への結合が共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)により確認され、微小管への内包は抗GFP抗体の結合の有無によって明らかとした。キネシン基板上における微小管の運動解析を行ったところ、TP-GFPを内包した微小管はその全長、剛直性の指標である持続長、および運動速度が通常の微小管に比べ増大しているという興味深い結果が得られた。さらに、微小管形成に伴う濁度を測定することで、TP-GFPは微小管の重合の促進、脱重合の阻害により微小管を安定化することが明らかとなった。 ナノ構造体をより効率的に微小管内部に導入するためのモチーフとして、TPを環化した環状TP(TCP)の開発を行った。TP末端に導入したクロロアセチル基とCysとの反応によりTCPを合成した。蛍光ラベルしたTCPを用いて結合解析を行ったところ、TCPはTPに比べ非常に強くチューブリンに結合することが明らかとなった。TCPを用いることで微小管が安定化されることがわかり、TCPは有用な微小管結合モチーフであるといえる。 以上のように、TPを用いたGFPの微小管への内包に成功し、GFPの内包により微小管の物性が大きく変化することを見出した。さらにTPを環化したより強く微小管に結合するモチーフの開発にも成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では微小管内部へのタンパク質および金ナノ粒子の導入による微小管の構造・機能改変を目的としている。当該年度は研究実施計画通りに実施し、GFPの内包に成功した。GFPが微小管に内包されることで微小管の物性が大きく変化することを見出した。加えて、新たな微小管内部結合モチーフである環状ペプチドの開発にも成功した。ナノ構造体の内包と微小管の物性の関係について重要な知見が得られたことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に得られた知見をもとに、引き続きタンパク質内包が微小管に与える影響を評価する。特に、GFPよりも大きな四量体タンパク質を導入し、より大きな構造変化を誘起する。また、当初の予定通り、金ナノ粒子表面にTPを修飾し、微小管への内包を試みる。特に、金ナノ粒子のサイズや表面電荷、TP修飾率などを調整し、内包効率や微小管への影響を解析する。有望なサンプルについては、キネシン基板上における運動解析やTEMによる詳細な構造解析、微小管の物性測定などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも試薬等の消耗品にかかる費用を抑えることができたため、より有効に予算を活用するために次年度に使用することとした。次年度は、引き続きタンパク質および金ナノ粒子を内包した微小管の構築と物性評価に重点を置く。物品費は、タンパク質およびペプチド合成のための試薬類、金ナノ粒子、測定に必要な器具、得られた成果を国内外で発表するための旅費、論文校正費に使用する。
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